メガネ朝帰り【カバー小説参加作品】
まだ朝日が昇りきらない薄闇を歩く、メガネを無くしたのは痛手だ。近視の私は裸眼で0.3くらいしかない。だからメガネがないと物の輪郭がぼやける。
ふと足下を何かが横切る。「野良猫」か「ドラ猫」か分からない。猫だったのかすら判らない。
「ホテルで忘れたのかな……」
飲み屋で意気投合して、その男と安ホテルに入った所までは覚えている。目が覚めた時、横で寝てる男の容姿や体型への拒絶感で逃げ出した。
「もう深酒はしない……」
何度目の誓いか忘れた。二日酔いの頭痛で意識がはっきりしないまま歩くが、そろそろ太陽が昇っても良さそうなのに「朝」か「夜」か分からない。空を見上げると曇天しかみえない。
ここがどこかも分からない。町を見ても輪郭がぼやけて、どこに向かっているのかすら判らない。
「空腹」か「満腹」か分からない。何時間も歩いているようにも感じる。町全体がぼやけているが、でも歩くしかない。
ふいに誰かが道の真ん中で立っている、私は人らしきものに近づいた。
「あの……ここはどこですか?」
曖昧で意味不明な質問は空虚に感じる。私は何を知りたいの? 突然その人影が早口で私に向かって責め立てるようにわめきだす
「『クッキー』か『ビスケット』か分からない。
『グレー』か『チャコール』か分からない。
『青海』か『青梅』か分からない。
『加藤ローサ』か「国仲涼子』か分からない。……」
口だけが大きく黒く広がって見える。私はあわてて逃げ出した。恐怖と焦燥感と孤立した精神状態は限界に感じる。
「ここは……本当にどこなの?」
誰かが近づいてくる、私はその人影に向かってわめき出す。その人影に「怒られる」か「叱られる」か分からない。でも私は、止められない。
「『○×△』か『●■☆』か分からない。……」
私は言葉にならない不思議な単語を叫び続ける。
「キジ」か「孔雀」か分からないけど、何かが鳴いた。きっと想像を超えるような生き物が鳴いている。もしかしたらそれは私なのかもしれない……
※原作をかなり変更しています。
カバー小説を作りました。暴走が始まってます。自粛します。
カバー元です。ありがとうございます。
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