ご免侍 七章 鬼切り（十四話／二十五話）
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あらすじ
ご免侍の一馬は、琴音を助ける。大烏城に連れてゆく約束をした。祖父の藤原一龍斎は、一馬を刀鍛治の鬼山貞一に会わせる。貞一の娘が母親だった。そして母は殺されていた。鬼山貞一から、母は生け贄にされたことを知る。生け贄の場所は大烏城だった。
十四
するすると金鬼が近づくと、拳をふるう。手首を切り落とそうとするが、出して引く動きが速すぎて軌道が読めない。
そして死角から入るのか、たまに変な方向から拳が飛んでくる。
「お名前は、一馬ですかな」
「……」
金鬼はブンブンと拳をふるう。息切れもせずに拍子を取りながら攻撃を加える。もちろん一馬も当たらぬように体を動かすが、気疲れするのか息があがる。
刀をふるうと手に巻いた鉄貫で受けている。
（こやつ、どれだけ目がいいのか）
手で刀を受けとめる真剣白刃取りの技術はある。だがそれを実戦できる人間は少ない。腕で刀をふるう限り、刀が大きいほど隙も大きくなるので、刀をふるう速度より早く動けるならば可能だ。
「一馬、琴音は幸せですか」
「うるさい」
「あなたと暮らせるならば、琴音は納得しますか」
「……」
油断させる作戦とは思うが、琴音がもし甘言に乗れば、敵側のいいなりになるかもしれない。そもそもが、大烏城に行きたいと願うのは琴音だ。
（もし行かなくていいならば……）
「あなたは迷っている、何が大事か考えなさい」
「……」
突きを入れても、斬りつけても微妙な距離でかわして、即座に攻撃してくる。これでは後の先をされているのは自分だ。
（足止めのための攻撃、終わりが見えない）
焦りは隙ができる、その隙をつかれた。焦ってふるった刀が地面を叩くと、金鬼は一馬の胸元に切迫して、肘をいれる。
重い打撃は一馬の体の平衡感覚を崩す。
「どうです、仲間になりませんか」
「なぜそこまで仲間にさせたい」
ゼーゼーと息が切れる。
「……あるお方からの命令なんですよ、あなたと琴音が幸せに暮らせればいいと」
「まるで意味がわからん」
