SS I 魚人(あいうぉんちゅ)#毎週ショートショートnoteの応募用
銀色のうろこは作り物には見えない、レンガ作りの壁に立っている男の顔は金属のように光った。男は俺を指さすと質問する。
「I 魚人(あいうぉんちゅ)? 」
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外人が多い港町は異質だ、この周辺で奇妙な事件が増えている。被害者の舌が無い連続殺人事件が起きた。
「お前が取材をしろ」
新米の記者としての初仕事は聞き込みだ。デスクから地図を渡されて向かう先は、東洋人が多い危険な地域だった。事件現場近くの酒場のバーティンダーに話を聞くと
「化け物の仕業だと騒いでるぜ」
ウィスキーのワンショットを何杯か飲むとふらふらになる。尿意を覚えてレンガにひっかけていると後ろから声をかけられた。
「I want you?(あなたがほしい?) ゲイじゃないぞ」
ふりむいて驚いた、男の顔は人間なのに鱗でびっしりだ、仮面? と思うがリアル過ぎる。男の口が大きく開くと舌をだした、長い、いや舌ではない、白いでかい虫だ、そいつがピョンっと飛ぶと俺の顔にしがみついた。
「うがぁごごご」
唇に強烈な痛みが走るが虫をひきはがす。地面に叩きつけると動かなくなる。
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「その虫は何なの? 」
「ウオノエだよ」
彼女のベッドでキスをしながらニュースになる特ダネの話をする。魚の寄生虫は、陸上進出を画策していた。舌に擬態をする虫は人間にも寄生するようになる、その過程で顔全体を鱗化させていた。寄生された人間は魚の鱗が生える。
「こわいわね」
「ああ怖いね……」
キスしながら彼女の舌を俺のウオノエがかみちぎる、目を大きく開いた彼女は適正者だろうか? もし寄生に成功すれば彼女と長く生きられる。口中の彼女の血を吸いながら、俺は目で笑う。特ダネはお蔵入りだ。