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SS 赤胴 【#爽やかな】#シロクマ文芸部参加作品

 爽やかな月代さかやきが青々としている。藩内では美少年剣士として名をはせているが、本人は無頓着で気にもしていない。

(秘剣をさずかりたい……)

 剣の修行をいくらしても上達したと感じない、強くなるために秘剣が必要だ。道主の一刀斎から伝授するためには、目録を得なくてはいけない。兄弟子達よりは強いつもりだが難しい。

「試合をして勝てばいいだけ」
「遺恨でもあるのか!」

 そうつぶやいた時に、さや当たる。見ると大柄な侍が怒りの表情でにらみつけていた。

「これは粗相そそうをいたしました」
「うるさい、こちらにまいれ!」

 右腕をつかまれたときに、顔を見上げると好色な顔で見つめられていた。元から無礼と言いながら、稚児趣味ちごしゅみでもあるのか乱暴するつもりだ。

 小手返し、からだをさばきながら腕だけで投げ飛ばす。相手の勢いがあるほど楽に倒せる。どすんと音がすると腰を打ち付けて侍は動けない。それを見て目礼だけすると家に戻った。

「果たし状だ」
「そうですか」

 翌朝になるとふみが門の外から投げられていた。父親からしぶい顔をして文を渡された。昼九つ(十二時)に、近くの野原で勝負を挑まれている。もちろん私闘は御法度で生死の決着はつけられない。だから木刀だと、あくまでも稽古の延長と匂わせているが、実際は殺し合いだ。

「わしもいく」
「一人で行きます」

 老いた父を無理させる気もない。

(秘剣さえあれば……)

 野原を歩く中で思案をしてみるが多勢に無勢だろう、たった一つの技で全員を倒せない。殺されるのを覚悟して歩みを進めていると、犬に吠えられた。体がその瞬間だけ震える。いきなりだったので驚いたのだ。そこでふと考えが浮かんだ。

「遅いぞ」
「もうしわけござらん」

 相手は十名ばかりの手練れだろうか? 浪人もいるので急いで腕利きを集めたのかもしれない。これだけの人数だと一斉には襲いかかって来ない、数人ずつ殺気を含めた木刀が振り下ろされた。当たれば骨を砕いて絶命する。

「エィィ!」

 道場で気合いを発するのと同じだが、より大きな声で叫んだ、相手は、まばたきする時間でも動きが止まる。それは本能だ、吠えられればひるむ動物の本能。

 その一瞬で、敵の親指を木刀で潰す。何が起きたのかわからないまま先陣が全滅すると、他の侍が二の足を踏んで後ろに下がった。見た目は美し少年だが、実力の程は知れ渡っていた。

(まさか秘剣を会得しているのか?)

 一人、また一人と戦線から離脱をするとあっという間に戦えずにうずくまる男達しか残っていない。

(そうか、秘剣を自分で生み出せばいいんだ)

 のちの真空切りの初陣である。

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