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ご免侍 八章 海賊の娘(二十五話/二十五話)

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あらすじ 
 ご免侍の一馬かずまは、琴音ことねを助ける。大烏おおがらす城に連れてゆく約束をした。母方の祖父の鬼山貞一おにやまていいつと城を目指す船旅にでる。一馬かずまが立ち寄った島は、水軍が管理していた。海賊の娘、村上栄むらかみさかえは協力する代わりに一馬との婚姻を望んだ。海賊の港に鉄甲船てっこうせんが突入する。散華衆さんげしゅう四鬼しき大瀑水竜おおばくすいりゅうは一馬に倒される。


二十五

 一馬の父、藤原左衛門ふじわらさえもんは、手のひらで一馬の胸に衝撃を与える。盲点のように一馬は父親の動きを意識の外に飛ばしていた。味方であると今でも信じていた。

「うむ……」

 肺から空気が抜ける、息ができない。重い一撃は一馬の動きを止めた。

「一馬」
「一馬殿」

 露命月華ろめいげっか兵次郎へいじろうが、あわてて駆け寄る。藤原左衛門ふじわらさえもん露命臥竜ろめいがりゅうはいずこかに姿を消していた。

琴音ことねを助けてくれ)

 そうは思っても声すら出せない、息ができないので顔色が青く変色する。いきなりくちづけをされると、月華げっかが息を吹き入れる。もがくように彼女から空気をむさぼる。顔色が戻ってきた。

 一馬は、ゆっくりと砂浜で横たわり天空の星をみる。おそろしい程の光のつぶが見えた。

(俺は、もう死ぬのか……)

「ほら起きろ」
月華げっか、あんまり無茶すると」

 ぐいっと上半身を起こされると、ベチベチとほお叩かれた。

「痛い痛い、わかった」
琴音ことねを助けるんだろ」

 そう言われると体が自然と動きます。砂浜に足をとられながらも走れるようになる。海賊の村上主水むらかみもんどの屋敷に到着すると、人であふれて屋敷内に入るのも苦労した。

琴音ことね
「どうしました」
「今、父上が」
「ええ、一緒に出て行かれました」

 権三郎ごんさぶろうが不思議な顔をしながら、大きな体の侍と一緒に、雄呂血丸おろちまるとお仙が琴音ことねを連れて外に出たと教える。

 脱力したように畳に座り込む……琴音ことねが、父親の藤原左衛門ふじわらさえもんに拉致された。

「馬鹿な、なんでこんな事に」

 畳に頭を何度も打ちつける一馬を権三郎ごんさぶろうが、必死に止めている。月華げっかも部屋に入るなり、畳に崩れ落ちた。海賊の屋敷で、みなが迷っていた。

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