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SS 墓場の女神とクァシン ワールドザワールド

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墓場の女神は困っていた。
貴族から頼み事をされている。
「死去した祖父と話をしたい」

墓場の女神はかつて、この国で暴れていた怪物を退治し、
その功績から神へと至った者だ。

死者を呼び出す事は可能だが、貴族の望んだ対面になるだろうか?
そこにクァシンが現れた。

「女神様、こんにちわ」
白髪の12歳くらいの少年は、元気よく挨拶をする。
「あら、今日はなにかしら?」
前にヒサギという少女と一緒に、私に会いに来ている。
その時は、ヒサギの死亡した両親と対面させている。

「貴族のキヨミズさんが困っているらしいので、
 私もお手伝いしたいと思いまして」

この子供は才気があり勇気もあるので、自分から役に立ちたいと
考えているらしい。

私は貴族のキヨミズが、死者との対面をしたい理由を
知りたかった。
「キヨミズさんは、最近はどんな感じ?」
曖昧な質問をしてみると
「死後の世界の事を気にしてましたよ」

なるほど死を恐れているのね。
祖父から話を聞きたいのだろう。
「クァシン、一緒にキヨミズさんの所に行きましょう」

貴族のキヨミズの邸宅は、大きい。
「キヨミズ城ですよ、大きいでしょう。和風の建物は
 何百年も朽ちずに残っています」
クァシンは博識らしく説明してくれた。

私は玄関先で貴族との面会のために椅子に座る
「女神様は、空間を移動できるので、すぐに会えるのでは?」
クァシンは目をクリクリさせて聞いてくる
「人にはプライバシーがあるの、勝手に部屋に入るのはダメよ」
ふんふんと、うなずくクァシン。
知識は豊富なのだが、まだ常識が無い所が子供だ。

「キヨミズ様が、お待ちです」
面会を許可されて、貴族の部屋で話をする。

「女神様、私は死が怖い、今この世界から居られなくなる
 この恐怖をどうすれば解決できるのか、
 祖父と相談したいのです」
キヨミズは街を管理しているが、領主と言うわけでもない
あくまでも、相談役に近い存在だ。

「お話はできます、でも死の苦痛と恐怖から逃れられません」
死は肉体の破壊を意味する、個は喪失して存在は消える。
私が呼び出しているのは『対面する人が望む記憶の再構築』だ。

記憶から外れるような質問をしても、答えない。
私は説明するか悩む。
相談者の悩みは、結局は相談者しか解決できない。

私が口を開こうとすると、クァシンが口を開く
「ゴールが見えるから、歩めると思います」

「ゴールとは何かね、クァシン君」
キヨミズは、びっくりしたように聞く

クァシンは少しだけ考えてから再び口を開いた。
今度は先ほどよりもゆっくりと、言葉を紡ぐようにして。
「ゴールが無ければ、進む事もしないし、毎日何もしないで
 暮らすでしょう、死があることで歩けるのです」

キヨミズは数分黙って考えていたが、納得したのか
「女神様、今日はわざわざありがとうございます
 恐れるべきものは、ありませんでした」

帰りはクァシンと歩いていて戻る
ぶらぶら街を歩くのも楽しい。
「ねぇクァシンは、なぜ死をゴールにしたの?」
クァシンは即答した
「きっとゴールしたら、ご褒美が貰えそうで」
子供らしくて、ちょっと笑ってしまう。



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