創作民話 悪徳お姫様は吸血鬼に狙われる4
「大公と結婚するだと?」父王は私を見ながら呆れている様子だ。
「大公はまだ3歳だ、結婚はできない
お前の結婚相手は、用意した安心しろ」
謁見(えっけん)の間から追い出されると、
専属メイドのアメッタに向かって文句を言う。
いやアメッタに化けている吸血鬼ヴァリアを問い詰める。
「あなたは、私と結婚したいんじゃないの?」
だいたい3歳って何?
「うむ、今は3歳として現世を楽しんでいる、
さすがに不老不死のままでは、過ごせない」
「だめじゃない・・・」
結局は、また変な男に嫁ぐハメになる。
「今って事は、あなたは何年くらい大公だったの?」
素朴な疑問を口にする。
「妻を20人くらい変えたかな」
この国に数百年は居る計算だ。
ヴァリアは説明をしてくれた。
人間との間では、子は作れない。
産んだことにして眷属の娘が子供として育てられる。
そしてタイミングで入れ替わる、を繰り返す。
「今の大公は誰が・・、アメッタ?」
「そうだ、三歳の子供に化けている」
「眷属の娘達はどうなるの?」
「寿命がある」
奥さんになった人も寿命で死ぬのだろう。
「それならしょうが無いわ、別の所に嫁ぎます」
切り替えは大事だ、吸血鬼に嫁ぐのもおかしい。
「変な男かもしれないぞ」
「命令だし、義務もあります」
王族として生まれた宿命は覚悟している。
「義務ね」
どこか寂しげに聞こえる。
数日後に、嫁ぎ先の王子が迎えに来た。
「私は砂漠の国の王子、マハージャルだ」
面長で精悍な顔は残忍でどう猛に見える
私の腕を掴むと引き寄せて腰を抱く
「肉づきはいいな、子は産めそうだ」
やたらと体を触られる、体全体をまさぐられる
黙って耐える事にした
「このまま国に帰りたいが
商談が終わってからだ、今日からお前は妻だ」
私は用意された彼の部屋に行くと、着飾った女性が数人居る
従者かと思ったら、妻だと紹介される
一夫多妻制だ。
「よろしく」他国の女性達に話かけたが、言葉は通じない。
「言葉を覚えないと・・」
お国柄なのか、彼女達からは特に嫉妬もされずに受け入れられた。
夜になると旦那様が戻る。
盛大に飲み食いしたあとに、すぐに寝所を連れて行かれた
私を乱暴に脱がせると、いきなり頬を平手で殴る
「いいぞ、興奮してきた」
彼は暴力で女を従属させるタイプなのか、何度も殴られる
鼻と口から血があふれ出る、頬の内側が切れた
もう何も考えられない、このまま殴られると
顔が変形する
恐怖で叫び出した。
「黙れ」彼は剣を取り出すと抜いて私に向ける。
吸血鬼が彼の背後に近づくと黙ったまま彼の首を掴む。
背後からゆっくりと締める
バタバタと手足を動かすが逃げられない。
王子の顔が、真っ赤になり青黒くなる
舌を出してぐったりすると、王子を床に放り投げた
吸血鬼は私の傷を修復してくれた。
「ありがとう・・」
人として生まれて、これほどの苦痛を味わうのは初めてだ。
体の傷は癒えても心は折れてしまった
「尼になろうかしら」
私は少しずつ心を閉ざす。
吸血鬼ヴァリアは、頭をやさしくなでてくれる。