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SS クッションは、蹴るものだ。 #ストーリーの種

今日もイライラをするとクッションを蹴る。「仕事でまた怒られた、なんで無給で休日に研修しなくちゃいけないの」上司から製品の研修案を出せと言われた。私は必死に考えて提案をしたら「俺を馬鹿にしているのか」と怒鳴られる。

「自分で考えればいいじゃない」私は蹴ったクッションを手に取ると顔をうずめる。「仕事なのに無給ってどんだけブラックなの」薄給だけど居心地は良い。回りの人は親切だけど昭和生まれの上司は、会社のためなら休日出勤も当たり前、みたいな特殊な考え方をする。「辞めようかな」私は立ち上がるとクッションを蹴る。気分が良い。クッションは、蹴るものだ。蹴らないクッションはクッションとして失格。

ストレスがあると蹴った。だいぶボロボロだ。「Amazonで買おうかしら」クッション大型サイズとか蹴りがいがありそう。購入すると確かに足に伝わる重さが心地よい。すぱーんと決まると嬉しい。しばらくすると穴が開いた。「さすがに返品は無理ね」一ヶ月も持たないのだ。

仕方がないので大型ビーズクッションを買う。重いし1メートルはあるが、これも持たない。蹴った瞬間のビーズの拡散具合が良かったのに。袋が破れてビーズが部屋中に散らばった。その後も様々な製品を購入するが、とにかく耐久性が無い。

私はコンビニでお弁当を暖めている最中に雑誌を手に取る。ちょっとエッチエッチな本だ、女性向けなのか実話物が多い。買ってから家で読むと広告がある。「ストレス発散 あなたもサドの女王様に」私は興味津々で電話をしてみた。休日だけのバイトでもいいらしい。登録制でプレイ方法を書くと客の好みと合致すると電話が来る。車で送り迎えがあるので安心だ。

初めての客はムチで殴るだけで面白くなかった。でも自分からプレイ内容を指定できる事に気がついた。なにしろS側なのだ。私は大きなクッションの中に男性を入れて蹴る事にする。

評判になると私は会社を辞めた、一ヶ月で十日も働けば十分に暮らしていける。今日はホテルの仕事だ。私が部屋に入ると前の会社の上司が待っている。お互いが驚いたの当然だがそれよりも手配間違いで、両方ともサド設定プレイを望んでいた。

もちろん私は上司をハイキックで倒した。昏倒している上司を残してホテルを出ると、次の野望が心に芽生える。数ヶ月後に、私は立ち技格闘技のリングの上で活躍をする。クッションを蹴る事で鍛錬が出来ていた。リングネームは「クッションキラー」だ。

終わり


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