SS 親切な暗殺 #毎週ショートショートnoteの応募用
「暗殺ですか……」
「暗殺だ」
跡目争で、護衛騎士に幼い皇太子を殺せと命令される。
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「今日も遊ぼう!」
目がくりくりした皇太子が走ってきた。金髪の少年は十二歳くらいで活発な子供だ、やたらと剣の練習をしたがる。
「キミには負けない」
「立派な王様になれますよ」
剣を受けながら、その力強さに感心する。この子を殺さなくてはいけない……
「ねぇ、相談したい事があるんだ。誰にも知られずに会いたい」
「判りました」
都合が良い、自分から死ぬ場所を選んでくれる。護衛騎士は短剣を用意して月夜の塔に登る。
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「見晴らし良いよね」
「そうですね、ご相談は何ですか」
短剣を抜く、ひとつきで楽に殺そう。これは親切な暗殺だ。どの時代にもある醜い王位争い。
「ぼくは、女の子なんだ」
「……」
寝間着を脱ぐと真っ白な裸身を見せる。
「僕は王様にはなれない、いつかはばれる。だから事故で殺して欲しい」
王子を産んだと偽り、母親は周囲を騙してきた。成長すれば嘘もばれる。そうなれば母親も危険だ!
涙を流す少女に剣を向ける。
「君は、ここで死ぬ」
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王子が行方不明になり大騒ぎになるが、元から殺される運命だ、すぐに沈静化する。
護衛騎士の家に一人の少女が雇われた。今日もお洗濯をしたり掃除したりいそがしそう。金髪の彼女は剣の腕前だけは、大人顔負けだ。