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SS 平和の宴【見たことがないスポーツ】#毎週ショートショートnoteの応募用(900文字)

 オリンピックには封印された競技がある……レスリングである。もちろん従来のグレコローマン式やフリースタイルはあるが、封印されたレスリングは別ものだ……

「テミスト、準備はいいか」
「ああ……平気さ」

 テミストの全裸の体はオリーブオイルで輝いていた。腕の力こぶは隆々りゅうりゅうとして肩幅も成人男性の二倍はある。

 ギリシアで一番の男、すべての競技で一位をとる英雄。競技場からテミトスを呼ぶホルンの音が響く。暗い控え室の扉が開かれた。

「テミストー」
「ステキよー」

 ブロンドの美女達が英雄に賛美と応援のエールを送る。テミトスが両腕を上げて筋肉を見せつけた。

 対面の扉が開くと獣がのそのそと進んできた、それは巨大な爬虫類でワニのようにも見えるが鱗がもっと薄い。黄金のドラが鳴らされると競技の開始だ。

『ドラゴンキラー』動物と人を戦わせる競技。それは獣ばかりではない、ギリシア人以外とも戦わせる。テミトスは軽々と爬虫類にまたがり後ろから首をへし折った。

 次にコロシアムに追い立てられたのは黒人の戦士、背は高いが槍をもたぬ彼は戦うすべがない、テミトスに腕をねじり上げられて殺される。

(こんな事に、何の意味が……)

 オリンピック、名目は平和だが、その平和の中で戦いは続けられる。オリンピック、名誉と金と戦いに興奮するだけのうたげ

 最後に競技場に立ったのは目の細い少女だ。東洋風の少女はテミストをにらみつける。奴隷として連れて来られたのか……これは余興だ、十分に時間をかけてなぶりものにして最後に……

(平和……そうだな、これが平和だ……)

 力のある国が平和を維持するために国民に残虐な見世物を与える。テミストは、少女の前に立つ、一撃で殺して終わりにしよう。

 見えなかった、下腹部にすべるように突撃された、金的への衝撃は致命傷になる。なにかの格闘術を知っていたのだろう。悶絶してテミストは地面に座り込む。少女は彼の後ろ首に足蹴りを入れた。

 オリンピック、平和の祭典、テミストは未来がもっと平和になるように願いながら、絶命する。

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#オリンピック
#欺瞞

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