SS 占い師マイカの毎日:太陽【ワールドザワールド】
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あらすじ
女神の見習いのヒサギが悪魔に取り憑かれた。祠の中にある万魔殿にヒサギは閉じ込められる。突入した私達は東京に歴史と言葉を記憶して転移した。ヒサギを探すために行動をする。
早朝の東京は騒がしい。そんな中でラブホテルから寝不足の私は外に出る。コレクターは熟睡したようでさっぱりした顔だ。今の状況が異様すぎて馴れないが彼は違う。私は考える、【コレクター】がタロットカードを落とさなければ、私は拾って愛娘の修行に同行しなければ、もし…、キリがない。後悔しても始まらない。
「ヒサギが近くに居るって?」
愛娘はタロットカードの【隠者】の啓示の話をする。東京が私の得た知識と同じ広さなら、探すのは困難で無理だ。しかし近場なら学校などを見張れば良い。私は記憶している地図から中学校があるのを知る。ヒサギの歳ならば中学生になる、そこだろう。校門近くで見張る事にした。
「ねぇ、あなたは、なんで一緒に居るの?」
「カードが欲しいのです」
【コレクター】に話を聞くとカードを落とした責任を感じているのと、タロットカードを取り戻したいと希望を語る。今は私が保有しているが所有者に帰属している、私から譲り受けたい。
「私が同意すれば渡せるの?」
彼にも判らないらしく困惑していると言う。鞄が動く。またタロットだ。まばゆい光と共に金髪の青年が立っている。【太陽】と名乗る。
「ヒサギさんが近くに居ます、私達は世界を救える」
どうもタロットカードの住人は芝居がかっている。他人に啓示を与えるから普段から上から目線なのかもしれない。謙虚さが足りないわね。自分で考えて普段の私も同じだと気がつく。恥ずかしい。
「楸が居たよ」
愛娘が通学路を他の学生と歩く少女を指さす。私は彼女に駆け寄る。
「楸?私が判る?」
彼女はちょっとだけ驚く、私の手首をつかんで通学路から離れる。
「舞夏さん?どうしてここに?」
どうしても何も助けに来たと言うと彼女は悲しそうにしている。学校があるからと言うと夕方に公園で待ち合わせをすることにした。暢気に学園生活をしているヒサギに少しだけ不満に感じた。記憶があるなら自分から外には出られない?
そして気がついた。私はこの東京=万魔殿からどうすれば出られるのか?【コレクター】に聞くと侵入した場所から力を使えば外に出られる……問題は悪魔だ。退治をしない限りは万魔殿が残る事になる。
「舞夏さん」
公園で時間を潰していた私達の前に学生服を着た楸が歩み寄る。
「ごめんなさい、お父さんに夕飯を作らないと」
彼女はそわそわと帰りたがっている。私は洗脳を疑う。悪魔に騙されて記憶を操作されている。私は楸の肩をつかむとゆする。
「ワールドザワールドに帰らないと」
「ごめんなさい、それはできないの」
彼女は状況を説明した。お父さんは悪魔だ。ぐーたらで何もしない。頭も悪く粗暴だ。それでも父親として私を愛してくれている。
典型のように騙されていた。楸は悪魔に依存をして生活をしている。駄目な夫に騙される女房だ。
「しっかりしなさい、あんたは悪魔に騙されているの」
もちろんそんな正論が通じるわけもない。すいませんと謝ると家に戻る。私は呆然とした。【太陽】が近づくと私の肩を叩く。
「私達は最後は成功します」
根拠のない楽観論を言われて……。悪魔を倒さないといけない。ならば楸を追跡して実家を特定してから、中の悪魔を退治すると決意を固める。
簡単な事だ。
「あんた、けっこう物騒なんだね」
冷静に愛娘に突っ込まれると凹んだ。
続く