ご免侍 七章 鬼切り(十八話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬は、琴音を助ける。大烏城に連れてゆく約束をした。祖父の藤原一龍斎は、一馬を刀鍛治の鬼山貞一に会わせる。貞一の娘が母親だった。そして母は殺されていた。鬼山貞一から、母は生け贄にされたことを知る。生け贄の場所は大烏城だった。
十八
「それで、どこにあるの、大烏城」
「西国と聞きました」
月華の問いに、琴音が答えるが明確な位置ではなく、城に行ってから判るような、あいまいな話で答える。
「えー、それじゃわからないじゃん」
「お城に行けば大丈夫です」
何やら自信たっぷりの琴音に、雄呂血丸が助け船を出す。
「拙者が助けた池田宗次郎殿の書状がここに」
琴音から預かっていた書状を皆の前で広げて見せた。
「キのシロまで、お連れもうします」
「キのシロ?」
「備前の岡山藩ですな」
「そこに大烏城があるんだ」
大阪を抜けてさらに遠い。歩いて間に合うのか微妙だ。お仙が不思議そうな顔で
「京に行くんじゃないのかい」
「帝のお嫁さんだよね」
「城主の娘になります」
岡山藩の姫として京にまた上る手はずらしいが、もちろん水野琴音は、詳細はわからない。
ただただ父親に言われた場所に旅する、それだけを考えていた。
(琴音が姫となり、贄にされるのか……)
一馬は神事の事はわからないが、人身御供として高貴な人を選ぶのは、それだけ霊験あらたかなのかもしれない。
(その神を名乗る代行者を斬って捨てれば……)
何やら物騒な事も考えたが、古来から行われている神事をそんな事で止まるわけもない。
(いざという時は琴音をさらって逃げる……)
一馬は、うんうんと額に皺を作りながらうなっている。鬼山貞一は、それを横目で見ながら
「ならば、まずは上方を目指す」
みなの前で、古い街道地図を持ってきた。そこには上方から出る船の流れも描かれていた。