怪談 木の実と少女 【#木の実と葉】#シロクマ文芸部参加作品
木の実と葉がちらばる深い森の中を少女が歩く。カサカサと草履が地面を踏む。ただ踏むわけではない、足でクルミを探している。
(あった、クルミ)
少女が足で見つけたクルミをカゴの中に入れる。手に持ったカゴには村人が一つずつ食べられるだけの量がある。
「おい」
「はい」
みれば、みすぼらしい子供が手を出していた。
「クルミをくれ」
「探せば、まだあるわよ」
「そのカゴのクルミを全部くれ」
「だめよ、村の人に食べさせるの」
「いいがらぐれ」
子供は大人のような声色で、少女を脅した。自分より幼い子供は恐くはないが、哀れと思って一個だけ渡す。
「これで我慢して」
「ふん!」
少年は鼻をならすと、固いクルミを歯でかみ砕いて食べてしまう。その歯は、ノコギリのように尖っている。
少女は恐ろしくなり村に逃げ帰った。村の中に入ると村人が倒れている。頭蓋骨をかみ砕かれて死んでいた。
(なにが……)
「お前は助けてやろう」
「え?」
「クルミを一個だけもらったからな」
耳まで裂けた大きな口で、森で出会った子供が笑っていた。
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