ご免侍 二章 月と蝙蝠(十三話/三十話)
あらすじ
銀色の蝙蝠が江戸の町にあらわれる。岡っ引き達が襲われていた。芸者のお月が一馬を狙う。
そりがない細身の剣が銀色に光る。お月の顔には殺意はない、無表情な彼女は、するすると近づくと鋭い突きを入れる。あわてて太刀を抜いて応戦する。
(これは……修羅場をくぐっているな)
隙があるように見えて、きちんと急所を狙う。何度も繰り出される鋭い剣筋は、誘いと必殺の突き繰り返す。
一馬は、彼女をどうしたいのか無意識の中で迷っていた、しかし体の方が的確に剣を受ける。倒せる自信はあるが倒すなとどこかで声がする。
「まてまて、理由もなしに殺すのか」
「脇差しの血曇りを見たのよ」
これまで何十人も殺している。刀は研げば、それだけ細くなる。平和な時代に、そんな刀を持っている男を危険と感じたのか……
「それは説明できる」
「聞いてどうするの」
頑固な女だと思いながらも真面目に見える。受けきれると油断していた突きの一撃が心の臓を狙う。体を沈めて肩で受けた。
(ん……まずいな)
肩に深く刺さった剣を抜くために後ろに飛び退いた。痛みは、すぐには来ない。傷が深いせいだ。左腕が重くしびれがきた。
「最後に言い残すことはあるかい」
お月は氷のような声で、とどめを刺そうと肉薄する。手加減できないと覚悟した。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?