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ご免侍 十章 決戦の島(二十四話/二十五話)

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あらすじ 
 ご免侍の一馬かずまは、妹の琴音ことねを助けるために鬼ヶ島を目指す。父と母は敵として一馬かずまの前に立ちふさがる、過去を断ち切る鬼切おにぎりが、うなる!


二十四

 散華衆さんげしゅうの生き残りは、四鬼しきよりは弱いが、鍛錬をこなしている戦闘集団だ。奇妙な体術や異様な武器を振り回して一馬を襲う。

「一馬、逃げて」

 すぐに琴音ことねは、忍者の集団につかまる。一馬は防戦一方で攻撃するすきがない。武術は相手の動きを見て攻撃手段が判ってはじめて、攻防一体の動きができる。だが今の状況では、それすらも許されない。

 腕や足が切り裂かれる、槍や分銅ぶんどうをもった武器で遠隔から攻撃を受ける。疲れはしないが、血は流れる、血が多く流れれば、意識が飛んでしまう。

(これは……負ける……いや、いや、負けぬ)

 場の空気を支配するように鬼切おにぎりが、震える。その振動は波となり敵にぶつかり自分に戻る。それは音の波だ、見なくても攻撃が判る。

 ふりまわされる武器を避けると忍者集団に突っ込んで鬼切おにぎりで、斬りまくる。後ろから攻撃されてもすぐに察知できた。おそるべき妖刀は、刀を持った人間を無敵にした。

「一馬あぁぁぁ!」

 海の方向から月華げっかの叫ぶ声が聞こえた、巨大な爆音がすると海賊船の先頭から大筒が発射される。海につながる洞穴から侵入してきた船は、味方を連れて突進してきた。元山賊の権三郎ごんさぶろうが、むやみやたらと撃ちまくる。あまりのすさまじさに一馬は逆に身動きとれない。

 どんっと船に衝撃が走ると、月華げっかや海賊の村上栄むらかみさかえが乗り込んできた。船の上は血まみれの死体で充満している。

琴音ことね……」
「大丈夫ですよ、一馬」

 無傷の琴音ことねが腕を広げると一馬をしっかりと抱きしめた。緊張の糸が切れると一馬はずるずると座り込む。戦いは終わった。足もとには、先ほどの攻撃で、年老いた元城主の大烏元目おおがらすがんめが死んでいた。

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