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怪談 心爱的人 【恋花粉&濃い古墳】#毎週ショートショートnoteの応募用

恋花粉リエンフアフェン……」

 雲南省で春秋戦国時代の古墳群が見つかり調査に入ることになる。俺も日本から応援で参加した。一緒に発掘調査をする中国人と古墳に入るが、ここは密度が濃い古墳群のようだ。いたるところで骨が見つかり石棺には名前が彫られていた。

「遊女の墓でしょう」
「遊女も埋葬?」
「これは、何かのタタリを恐れたのかも」

 古墳の壁には中国の妖怪が彫られている。

「ふるいまじないです」
「どんな意味が?」
「妖怪を使って閉じ込めようと……」

 中国人が絶句する、凝視する先には古代の服を着た女が立っている。美しい顔と古風な髪型で死人だと直感する。

「逢いにきてくれた……愛しい人」

 震え上がる中国人をだきしめる。だきしめて愛撫する。愛撫してむきだした歯で肉に少しずつ噛みちぎる。凌遅刑りょうちけいと同じだ、人の肉を削って殺す死刑の方法。痛みで狂ったようにもがく中国人は、みるまに骨になり、それでも生きているのかメダマだけギョロギョロと動かしていたが顔の肉をすべて食べると絶命した。

 動けない、腰が抜けた、死を覚悟したのかもしれない。

「あなたも私に逢いにきてくれましたか」
「しらない」
「こんな暗い場所に閉じ込められて、さみしかったです」
「おれは何もしらないんだ」

 血まみれの顔が美しく輝く。

「私も同じように殺されたのです」

 妓女ぎじょだった彼女は、通り名は恋花粉リエンフアフェンで、とても良い匂いがすると評判になり身請みうけけされた。身請みうけけした老人は彼女の肌が目的だった。文字通りに肌を食べた。

「とても痛かったです、毎日けずられて」
「……それで死んだのか?」
「ええ、でも最後は私の恨みで一家を滅ぼせた」

 良い匂いがする女の肉を食べる事で不老不死になると妄想した老人は、いつしか体に赤い斑点ができて苦しみもがいて死んだ。そうなると半死半生の妓女ぎじょを殺すしかない、生かして置いても意味がない。

「家族に食べられました」

 彼女は笑う、笑いながら俺の腕を食い始めた。彼女はどれほど苦しかったのか、死んでから祟って一家を滅ぼし、遺骨は封印されたことを教えてくれた。最後まで話が聞けたのは、俺の手足から食べたから。血の涙を流しながら俺を彼女に哀願する。

「早く俺の心臓を喰ってくれ」
「いいえ、愛しい人は最後まで生かしておきたい……」


Love the PTA Toshi Inuzukaさん宛

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