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SS 壁持ち強襲女#毎週ショートショートnoteの応募用
壁、それは防御の要
壁、それは世界を救う力
「うりゃああああああああああ」
怒号を上げて敵を蹴散らす、大盾を使いライオットシールドバッシュで魔物を粉砕する。
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「ねえさん、今日も強かった」
「お前を守るためだ」
頭に手をやり、やわらかい毛をなでる。弟は嬉しそうに笑う。陰口で壁持ち強襲女と笑われている、盾をかまえて壁にして突進するからだ。自分は他の冒険者のように剣の技術や魔法を覚えられない。頭が悪いのだ。だからタックルのように敵にぶつかるしかできない。
「ねえさんが守ってくれたから詠唱できた」
異能の弟は詠唱時間が長いが強烈な魔法を使える。私が守って弟が範囲魔法を使う、ベストな戦法だ。酒場で飯を食ってると嫌な奴が来る。
「次のダンジョンで守ってくれよ」
いけすかないイケメンは女ったらしで、私のような無骨者でも頻繁に声をかける。それでも仲間集めは得意だ。
「判ったよ、弟も頼む」
二人で仕事をするのは難しい、イケメンみたいなのが居るから稼げる。私たちはPTを組むとダンジョンに入った。道中は楽だったが最深部に到着すると……無数の小さな鬼を従えた巨大で醜い食人鬼が襲いかかる。
「円陣! 」
遅かった、小さな鬼が仲間を食い殺す、私は敵を盾で潰すが数が多すぎる、弟とイケメンしか生き残っていない。私は叫ぶ、私を置いて逃げろ!
「馬鹿いうな! 」
イケメンが食人鬼に突進する、死ぬ気だ。全滅だ、私は涙を流しながら自分の無能さを悔やむ。
「ねえさん、大丈夫」
弟が私に触れると私の魔法回路が開く、私は無能ではなかった、塞がれた回路は自分の弱さ、弟が超高速詠唱を始めると私は光輝く。
「シールドチャージライオット!」
無敵の防御攻撃は結界魔法による敵の属性破壊。すべての敵を塩の塊にした。
「すげええなお前! 」
イケメンが私に抱きついてキスをする。顔面パンチでノックアウトすると、私は弟を抱きしめる。ありがとう、ありがとう……
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「お前はこの前、本気で殴ったろ、でも助かった」
鼻がつぶれてイケメンじゃないが、親しげに私に声かける。本気で私が好きなのかな? 私はイケメンの顔の横を壁ドンする。漆喰がぱらぱらと落ちてヒビが入った。
「私が好きなの? 」
イケメンは恐怖と羨望の表情で私を見つめる、初めての恋人が出来た。
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