SS 信者ブラスバンド #毎週ショートショートnoteの応募用
「全体、整列!」
ごつごつとした革のよろいと鉄の直剣で武装した兵士達がずらりと並ぶ。私は腕にかかえた縦笛を緊張しつつ持ちなおす。
「邪教徒に死を!」
「地獄で焼かれろ」
「神の鉄槌を受けろ!」
怒号が地響きになる。兵士達が足踏みをして土埃が立つ、私はむせるように咳をした。
「進軍開始!、突撃行進曲、はじめ!」
私は先頭で縦笛を吹く、太鼓とラッパが勇ましく鳴り響く。
この高揚感が信じられない、音楽に触れる事で無敵に感じる。後方から矢が放たれて前方の敵にふりそそぐ、私たちを追い越しながら兵隊が槍と剣で戦い始めた。
信者ブラスバンドとして、女学生の私は借りだされた。土煙で前が見えない、足下には味方と敵の死体で足をふみはずす。クラスメイトはどんどん死ぬ。
「もう……だれも居ない」
閑散とした戦場で、数人がとどめを刺しながら殺し合いをしているだけだ。私は一人。
気がつくと誰かが手を差し出す、太鼓を持った敵の少年は私を助け起こすと、太鼓を叩いてくれる。私も縦笛を吹く。
ドンドコドン ドコドンドン
ピポピポピー ピポピポピー
「うふふふ」
「あははは」
神様、どうか楽器で戦わせてください……