ご免侍 八章 海賊の娘(十四話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬は、琴音を助ける。大烏城に連れてゆく約束をした。母方の祖父の鬼山貞一と城を目指す船旅にでる。一馬が立ち寄った島は、水軍が管理していた。海賊の娘、村上栄は協力する代わりに一馬との婚姻を望んだ。海賊の港に鉄甲船が突入する。散華衆の四鬼、大瀑水竜が一馬を襲う。
十四
大半の船は海賊の港に置いてあったが、それ以外の船もあちこちに停泊してある。一馬達が乗る船を囲むように海賊船が取り囲む。
「出発」
遠めがねで見ていたのか、鉄甲船がゆっくりと動き出す。漕ぎ手が艪を動かしてゆっくりと向きを変えはじめた。片方だけでも二十人で艪を動かしている。船体の上には板屋根の構造物も見えた。そこから遠くの敵を見ているのかこちらに進んできた。
ドーンドーンと大筒の弾が飛んでくるが、海賊達は縦横無尽に動きながら弾の届かない場所で近づいたり遠のいたりしている。たまに船の近くに弾が落下するが水しぶきをあげるだけで無傷だ。
「百間くらいか」
今の距離で弾は二百メートルくらいは飛んでいるが、戦国時代のように遠くまで飛ばせる砲がない。
一馬達の船は隙をうかがいながら突撃する。帆に風を受けて素晴らしい速度で近づくと鬼山貞一が作った銛に火をつけた。
ドンッと音がすると白い煙を吹き出しながら、鉄甲船の甲板に落ちた。そのまま矢についていた縄を引っ張るとしっかりと船体に固定される。
「あたしがいく」
露命月華が、縄をつかんで屋根の上の高さはある甲板によじ登った。すぐに月華が別の縄を降ろすと一馬は縄をつかむと小さな滑車がついているのか、すいすいと甲板まで登りはじめた。
甲板では月華が縄を引っ張りあげている。船に残した権三郎は、船から出ている艪を、連射できる火縄銃でどんどん破壊する。こうなるともう船を制御する事ができない。
「ここまで来たか……」
四鬼の一人、水鬼の大瀑水竜が、甲板の上に作られた矢倉から姿を現す。そして敵が甲板にあふれだした。