SS アイニャンの冒険2 ワールドザワールド
あらすじ
愛娘(アイニャン)は、地下の冥界の女王から依頼されて
女神候補のヒサギを連れて奈落へ旅立つ。
「冥界の女王さんは、私にどんなご用なんです?」
ヒサギが質問するが「ごめん、知らないの」
幼いヒサギと冒険者のアイを連れて森を抜けて石橋を渡って
奈落の入り口につく頃には、日も暮れていた。
「じゃあここから入るわよ」
私はヒサギとアイの胴に手を回すと、奈落の穴に向かって飛び込む。
地下世界の住人は神通力を持っている。
私も使えるので高所から落下しても平気よ。
長く落下して着地しても、2人を見ると驚いてもいない。
「あれ?平気だったの?」
「私たちもこの穴から落ちました」
ヒサギはニコニコと笑いながら歩いて行く。
私が逆にびっくり、さすが女神候補ね
小高い丘の上にある屋敷には
冥界の女王の孟龍(モウロン)が住んでいる。
瓦葺き(かわらぶき)で真っ赤な壁と丸い窓は、とても美しい。
「へぃ女神様、ヒサギを連れてキマシター」
場の雰囲気が暗いのでテンションを上げたけど、
孟龍(モウロン)は、私を見るとむっつりと「ご苦労」と言うと
ヒサギとアイに
「これは墓場の女神からの依頼でもあるんだが・・・
この地下世界で、女神が一人消えたらしい」
ヒサギは「どなたです?」
「悪意の女神だ」
なんか深刻な話だった。
冒険者のアイが若干眉をひそめたみたい。誰なのかしら?
「悪いが、地下にある迷宮世界で調査をしてくれ
そこの愛娘(アイニャン)が助けてくれる」
まじで、仕事は終わったと思って気をゆるめていた
「えー女王様、私は師匠の所でお仕事がぁ・・」
孟龍(モウロン)は
「師匠も了承している、修行になる」
と死刑宣告レベルのブラック対応でピエンピエン。
どうしようマジでキツイ、目の前がまっくら。
ヒサギが「迷宮世界ってどんな所です」と聞いてくる
「んーんとね、ツタまみれの岩の壁と魑魅魍魎が居るところよ」
ざっくりすぎた?
アイが「地上に戻ろう、支度をして仲間を集めないと無理だ」
ん?それは私が頼りないって事?
「あのね、いくら大人数でいっても迷ったら大変なのよ
食料も大量に必要になるし、仲間がはぐれたら探す事になるわ」
「私とヒサギだけで行くから、あんた帰りなさい」
アイに指を突きつけて、ビシッと決める。
「俺は行くよ、悪意の女神を知っている」
え?知り合いなの?
「悪意の女神(ワルワルの女神)は、俺を育ててくれた人だ」
はぁー、養い親ならしょうがない。アイも連れて行く。
私って本当にお人好し。
私はヒサギ達を大きな鳥居まで連れてくると
お師匠様の蘊蓄(うんちく)を、そのまま伝える。
「迷宮世界はね、地下世界とバイワールドの関係があるのよ
バイワールドは、隣あった2つの世界が位相をずらして存在
しているから、地下世界のどこに居ても迷宮に入れるの」
ヒサギとアイは不思議そうな顔をしている
私も自分で何を言っているか理解はしてないけど
「簡単に言うと、門があれば迷宮世界にいけるの」
アイが「その迷宮世界は危険なのか?」
「ふん、これだから素人は困るわね、危険に決まってるでしょ
じゃあ行くわよ」
鳥居の中央に円陣を描くと門が開く
「入るわよ」
3人が入った場所は、霧が深い広場だった。
「迷宮というから迷路かと思ったよ」
アイが歩き出そうとするのを、私は止める。
「あんた、バカなの、少しでも離れると迷うわよ」
そのアイに向かって、何かが近寄る。
ぶよぶよした人間だ、腕に鎖をもってブンブンと
振り回して襲いかかる
私は月牙産(げつがさん)を生成すると、一撃で両断した
なまぐさい血が飛び散ると、同じ奴らが集まってくる。
続く