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SS 真鍮うんこ #爪毛の挑戦状

 丁稚の五平が真鍮の置物を磨く、毎日のように磨く事を命じられていた。商家で丁稚奉公に来て、最初にやらされた仕事がこれだ。

「なんかきれいだな」

 金色に輝く置物は漢字の「一」に見える。片方がちょっとだけ上にとんがっている。真鍮なので価値は薄い、それでも磨けば金色にも見える。

「黄金の塊みたいだ」

 五平は縁起物だと思い磨き続けた。主人に命ぜられるまま奉仕をすると主人に可愛がられる。仕事も覚えて番頭になれた。今でも自分で真鍮を磨いている。五平は、これで偉くなったと信じている。

「大旦那様がお呼びです」
「はい、今行きます」

 若い丁稚に呼ばれて病床の大旦那のところに行くと、もう覚悟を決めたのか遺言をする。

「息子は隠居させろ、あいつは商売に向かない」
「判りました」

 内心は嬉しい。息子に継がせない判断は正しいと思う。

「お前に店をやる」
「はい、頑張らせていただきます」

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 しばらくしてから大旦那は死んで店をついだ。初めは上手くいくように見えても、徐々に売り上げが悪くなり、商家は傾いた。ある日に隠居した息子が店に顔を出す。

「五平さん」
「ぼっちゃん………すいません店をダメにしました」
「お前さん真鍮を磨いているかい?」

 旦那から店を継がせる話を聞いてから忘れていた。息子が理由を説明した。

「あの真鍮はね………犬の糞を模している」
「え?真鍮ウンコ?」

「親父が子供の時に商売に行く途中で道ばたで踏んだ、汚いが急いでいたので、そのまま商売を続けたら成功したんだ。あれが運気を上げると信じていたよ」

 五平はそれからは、自分で真鍮ウンコを磨く。なぜか店の評判も上がる。懸命に手を動かす事が大事だと感じる………

「真鍮ウンコ様、今日も運がつきますように」

 真鍮ウンコを神棚に置くと毎朝のように両手を合わせる。いつか真鍮の犬も作り一緒に置きたいと願うが家族に反対されるのが不満だ。真鍮ワンコも欲しい。

終わり


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