SS アイニャンの冒険7 ワールドザワールド
あらすじ
縦坑に女神をさらった牛鬼が現れる、
不意を突かれたヒサギ達と共に
愛娘(アイニャン)は、縦坑に落ちる。
「導師様、大好き」
幼い頃は幸せだった、地下世界は窮屈で貧富の差も激しいが
捨て子の私は仙術の達人の導師様に育てられた。
勉強は嫌い、文字とか覚えるのが大変
でも体を動かすのは大大大好き、体を自由に動かすと気持ちがいいな、体術を覚えて剣術も覚えて、武器を生成する神通力も習得した
導師様と一緒にずっと戦いたい
「どうしさま・・・・」
目が覚めると体は潰れている。腕を持ち上げるのさえ億劫だ
重い痛みがあるが、遮断しているのか激痛ではない
体が動かせない
目も見えないが、仰向けに寝ている私は上の方の光は感じた
ここは二階層目の底なのだろう
牛鬼が気になるが、落ちたヒサギ達がどうなったのか。
また体が冷える感覚が来る
「どうしよう・・・」
導師様に怒られるかな、地下世界を追い出されるのかな
涙があふれると、子供のように泣き出した。
思う存分に泣いた後に、私は獣人化を実行する
獣に変化することで体が修復される
大きなキツネになると立ち上がれた。
まだよろよろする
ゆっくり歩く
ヒサギと冒険者のアイを探す
まだ生きてるなら転送の印で地下世界に戻らないと
臭いをたよりに、うろうろするがどこにも居ない
底に居た妖怪達に食われたか、牛鬼が連れ去ったのか
自分では判断できなくなる、冥界の女王様に助けを求める事を
考えた、もう私では無理かもしれない
はじめの頃の威勢は無くなった、自信喪失して小さな子供の
ような気分になる
「導師様・・助けて・・」
獣の目から涙がでてくる
獣人化したことで体力を使った、
腹も減りろくに動けなくなる前に街に戻らないとヤバイ。
焦る心とヒサギ達を見捨てる行為で私は混乱した。
決断できない。
気がつくと周囲に影がある
人型だ、各人が武器を持って集まってくる
まるで初心者のような失敗を重ねる、
今までは導師様が居たことで安心して戦えた
自分がどれほど未熟なのか、はっきりと判る。
闘争心が生まれない、こんな事は初めてだ
これが恐怖なのか、私は怖くてふるえている。
急に上の方に大きな気配を感じた
私は顔を上げると
裸身の少女が上空からゆっくりと降りてくるのを見た
体に蛇のような文様がぐるぐると巻き付いて動いている。
少女は無音の神呪文を唱えると、波紋が周囲に広がる。
敵が枯れ木のように干からびると全員が崩れ落ちた。
「アイニャンさん、大丈夫ですか?」
ヒサギは素っ裸で、私に近づいた。
「あんた裸よ」
ヒサギはちょっとだけ恥ずかしそうにしたが
「へ、平気ですよ、それより地下世界に戻れますか?」
「アイはどうしたの?」
彼氏の姿が見えない
「大丈夫です、アイは私の内宇宙(インナースペース)に居ます
彼と融合したことで、一時的に義憤の女神(ネメシス)に
変化してます」
これが女神の姿なんだ、シマシマ模様ですごい事になってる
「判ったわ、人型に戻るから壁までいきましょう」
ヒサギがそばに居ると、なぜか力がわいてきた
なに?この安心感?
転送した後が大変、私も裸、ヒサギも裸
まぁでも地下世界じゃ変な格好した奴もたまには居る
家に帰るまで、じろじろ見られたけど平気よ
ヒサギはずっと私の後ろから離れなかったけどね。
続く