SS 占い師マイカの毎日:悪魔【ワールドザワールド】
あらすじ
平行世界に含まれる大樹の世界で占いの店を経営するマイカ。異世界のカードは絵のシンボルが実体化する特別な物だった。愛娘が力を得るために大樹へ向かう。
大樹の女神が私達を見る。彼女は精力的な女性でこの世界を安定させるために助力している。責任感が強い。
「それで愛娘は試練を受けるのね」
眼光が鋭い、威圧感のあるその顔で見られると目をそらしたくなる。怠惰な生活している者からすれば、あなたは何をしているの?と聞かれている感じだ。もっとも気のせいだが。
「そうよ、もっと強くなって導師様みたいに活躍したい」
愛娘は元気に答える。彼女の前向きさは見習いたい。明日は、お風呂掃除を絶対にする。
「戦力は常に必要よ、その三人で行くのか?」
私を見ている。私はうなずく。大樹の女神はにっこりと笑うと私の肩を叩いた。
「頑張れ」
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女神候補のヒサギが案内をする。大樹はその名前の通りに巨大な木で根っこの所に女神達が住んでいる。大樹の中には通路や階段があるので上に向かって進む事が可能だ。その巨大さは人が両手を広げて何百人も並んでも足りないほど大きい。少しくらいの通路が木の中に掘ってあっても大樹にはなんでもない。
「ここを昇ります」
弧を描いて上へ行ける螺旋の階段がある。大樹の内側を回りながら進む。予想外のきつさで苦しむ。ヒサギですら平気なのに私はダメだ。休みながら歩く。
「ねぇどこまで昇るの?」
「第一試練場です、距離は短いです」
ヒサギは笑って答えた。曖昧すぎる。
「何時間くらい?」
「二時間くらいです」
私は頭を抱えた。鞄がゆれる。【力者】のカードのライオンが出てくる。彼は私の顔を見ながら
「乗りな、上までいけるぜ」
なるほどカードが私を助けてくれる。私はライオンの背中に乗る。思ったより細い体でちょっと心配だ。馬のような太さが無い。ライオンは疲れた様子もなく階段を上り始めた。
「ずるーい」
愛娘がライオンに乗る私を見て笑う。私は修行とは無関係だ、楽して昇っても問題は無い。それを言うなら彼女に手助けをするカード達は反則にならないのだろうか?
女神候補のヒサギに質問してみた。
「試練は誰かの手助けを求めてもいいの?」
ヒサギはちょっと上を向くと
「試練は本人に資格があるか確認する感じです」
資質を見るだけで力を得られる?不思議な試験に思える。いや逆か資質が無ければ力は与えられない。求めても与えられない。厳しく感じた。
試練の場所は大樹の外側にある。内側の階段から外にでると祠が置かれていた。身の丈くらいの祠は扉がついている。人が通れる。愛娘が近づいて扉に手をかけた。
開かない。
私には開ける事が正解なのかも判らない。愛娘は祠の回りをぐるりと回ると、私達の元へ戻る。
「わかんにゃい」
お手上げのポーズだ。ヒサギは見ていたが祠に近づくと扉に触れた。ゆっくりと扉が開く。
「触れて開くのが試練だと思いますが…」
ヒサギは困ったように愛娘を見る。彼女には資格が無いのだろうか?
鞄がゆれる。カードが飛び出す。
急激に気温が下がる。肌寒い中で周囲が暗くなる。太陽が隠れるように陽射しが消えた。漆黒の闇の中でカードが空中に浮かぶ。現れたのは黒い毛が体中にある魔物だ。
「これが別の世界か?不思議だな。神の存在を感じる」
魔物はヒサギに目を向ける。彼は笑うと嬉しそうに地面に降りた。
「魔法の世界なのか?神が身近に居る、そしてお前は悪意と善意を持つ半神だ」
ヒサギを指さすと、彼女が倒れる。愛娘が魔物に突っ込む。魔物は愛娘の攻撃をかわしながら隙を見て、ヒサギの体に飛び込んだ。私は予想外の展開で動けない。ヒサギはゆっくりと起き上がると私達を見つめる。
「受肉もできるのか?便利な世界だな、俺の力はこの世界でどれだけ通用するのか試してみるか」
続く