SS なるべく動物園 #毎週ショートショートnoteの応募用
娘を連れて休日の外出。まだ幼い娘は動物園の匂いに顔をしかめている。
「なんか草の匂いする」
「そうだな草食動物の体臭だな」
娘がチョロチョロと歩き回るので見ているとラバの檻に近づく。
「ラバって何?」
「馬みたいな生き物……」
服を着た男が首から【ラバ】と書かれているでっかい名札をつけて座っていた。呆然とみていると、もう一人の男が檻に入ってくる。
「交代だ」
名札を交換して後から来た男が座る。虚無を見ている。
檻から出てきた男が檻の外を掃除している。俺は男に好奇心から質問してみた。
「あ、あのラバは……」
「ん?ああ、ラバの花子が死んだ、飼育員はペットロスで、ああして供養している」
なるほど呆然している姿は通夜のように感じる。
「パパ。この人はラバなの?」
娘が飼育員を指さすので私はあわてて立ち去る。
気がつくと檻の中には人しか居ない。みんな虚空を見つめていた。
「なるべく動物園として運用しているのか……」
その動物園は動物の補充ができなくても問題なかった。芸人がパフォーマンスで動物のマネをして受けている。