エッセイ 幸福論 【あれから１０年】 #青ブラ文学部参加作品
あれから１０年も、とも思うが早く時間が過ぎてくれと今でも考える。人が楽に生きられる時代が来ると夢を見ていた。子供向けの雑誌で見た幸福な２１世紀はどこにも無い。便利な人型ロボット、透明なチューブの中を走る列車、宇宙に進出した人類は惑星に到達して繁栄する。そんな夢のような世界が来る事を信じていたのに、実際は大国が戦争を仕掛けて領土を奪い合う陳腐なニュースしか流れてこない。
誰も夢を見せてくれない時代は不幸でしかない。
小説も漫画も映画もアニメも未来の幸せを見せないし作れない。あるのは使い古された超人が自分の幸福のためだけに力をふるう見世物。閉じこもった自我の世界を楽しむだけの自分の幸せしか写せない鏡。創作はいきづまり、目先の楽しさだけを与えて何も生み出せないまま終わる。
機械の知能は人を超えて超自我をもち人類が不要になる世界が来れば、それはそれで幸福なのかもしれない。選ばれた多様なサンプルだけが生き残る未来。幸せかもしれない。ユニークで貴重な容姿や性格や知能をもったミュータントが、どこかの飼育場で幸せに暮らしている。
新しい学習材料として苦痛のない場所で生きる人類。今はそんなイメージしか出来ない。あれから十年とふりかえる事ができるのだろうか？