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ご免侍 一章 赤地蔵(十一話/三十話)
あらすじ 一馬は侍と医者の暗殺を頼まれる。
一馬は突き飛ばされた女を避けて、部下と思われる男と対峙する。女が背後で倒れたと感触でわかる。縮地の術を使い一息で突いた。のけぞる男から視線をずらし、女を抱いて盾にしていた頭領に刀をふるう。
縮地の術は、忍術でもなんでもない。体捌きで重心をありえない早さで移動させている。
「ちっ」
短く舌打ちすると頭領が、みなに合図して逃げ出す。土手の上には、人影がもうない。足を切った男は、仲間に連れられて逃げ出していた。
「作蔵……作蔵……」
まだ若い娘は、倒れている男をゆすっている。老人と思われる付き人は、娘をさらおうとした賊に斬り殺されていた。
「娘さん、名前を教えてくれ、俺は御家人の藤原一馬だ」
「……水野琴音といいます」
すっと立ち上がる彼女は格式が高い生まれなのか感情が抑制されていた。さきほどの惨事に動揺していない。
「まずは屋敷に送る、場所を教えてくれ」
琴音は、黙ったまま首を横にふると老いた付き人の身を心配する。
(事情があるのか……これは困った)
何かの事情で逃げたしたのなら、先ほど切った相手は琴音と縁が深い者たちになる。
(厄介だ、頼まれ事が多いときに)
琴音の第一印象は、冷静さだ。
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