大団円 ワールドザワールド
「ヒサギ立てるか」冒険家のアイは私を起こそうとするが
力が入らない。
肝心な時に何もできない、涙があふれる。
「六の目さん、私だけに罰を与えてください」
「女神が懇願するのか?人間なぞすぐ死ぬ生き物だぞ」
鬼は面倒くさそうに語り始めた
「いいか、この世界は自由な設定の世界だ
女神もいるし、鬼も居る。まったく自由で善悪すらない
この世界を使ってくれと言われたから自由にしている
それなのにお前は、自己犠牲で話を終わらせるのか?」
「俺が鬼を倒した、俺だけ殺せ」
アイは私を床に静かに寝かせると、片手剣を捨てた
「ヒサギの命を助けてくれ」
鬼が面白そうに
「お前も同じ台詞か」
六の目は真顔になると、近寄り片手でアイの喉を締め上げる。
アイはもがく。
「もっともっと苦しめ、いやそれよりも女神を先に殺すか」
アイを投げ捨てると、私に近づく。
「まだ満足していないの?」
後ろから声がすると、私の鞄から封印の箱を取り出す
私に癒やしを与えた墓場の女神が、私の額に触れた。
前回のような万能感はないが、対応すべき事象を理解する
並列化した私たちは、六の目の起点になる事象を修正した
『対立したライバルが負けない』設定に書き換える
墓場の女神は、封印の箱から角を床に落とす。
角が光ると人型に変化する。
そして裸身の女性の鬼が再生した。
「封印が解かれたのか?」
カラカラと明るく笑う鬼は、六の目を見つけると
肩で体当たりをした。
床に倒れて動けない六の目の頭を踏むと力を入れた。
六の目が動かない事を確認すると
「前回は油断したが、私はお前より力は強い」
大きな口で、牙を見せながら笑っている。
ひとしきり笑うと、私たちを見た。
「まぁ封印を解いてもらったし、だまし討ちをした六の目も倒せた」
「この恩はわすれないよ、地上に戻そう」
墓場の女神は、地下世界も管理対象だ。
ただ鬼同士のいざこざには、率先して手を出せない
不文律で干渉を最小限にしていた
今回は、地上世界と女神候補の危機のために特別に手助けをした。
奈落の穴まで戻ると、孤独王とタイガーは無事で
タイガーは虎に変化していた
「虎になれるのね」私はタイガーの頭をなでる。
孤独王は「彼が虎の状態で、一人ずつ倒したからね楽勝だ」
アイが「ガヨクは?」と聞くと
孤独王は無言で頭をふる。
大樹まで戻るとクァシンは、回復をしていた。
私のそばまで来ると、頬にキスをしてくれる
「ありがとうヒサギ、命の恩人だよ」
私の両手を持ちニコニコと笑うクァシンはかわいい。
アイがそれを見ながら、何か言いたそうだ
「アイもありがとう、私のために命をかけた」
アイは私をゆっくりと包むように抱きしめる。
少し震えていた。
クァシンは
「アイとも仲良しになったんだ、ぼくも嬉しい」
無邪気に笑うクァシンとアイの間で、私は嬉しいような
悲しいような気分を味わう。
ワールドワイドの女神は
「まだ十分に力は使えない、このまま女神候補として暮らしなさい」
旅は終わった。
日常生活に戻ると、占い師のマイカに会いに行く。
「占いは当たったわ、冒険者と旅をして成功しました。
でも『平原』のカードの意味は何なのかしら」
マイカは話を聞くと
「女神の力がまだ無い、使えないって事なのかもね」
なるほど、女神候補として
これから何をすればいいのか考える事にした。
終わり。