ご免侍 八章 海賊の娘(二十一話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬は、琴音を助ける。大烏城に連れてゆく約束をした。母方の祖父の鬼山貞一と城を目指す船旅にでる。一馬が立ち寄った島は、水軍が管理していた。海賊の娘、村上栄は協力する代わりに一馬との婚姻を望んだ。海賊の港に鉄甲船が突入する。散華衆の四鬼、大瀑水竜は一馬に倒される。
二十一
「それで、話はなんだ」
声が固くなる。月華が、もし敵の側の思惑で動いているならば……殺せるか……わからない。月華の顔をぐっと見つめる。
「どうしたの」
「私たちは敵ではありません」
浅黒い肌の兵次郎は、漁師にしか見えない。笑う顔は男前で誰からも好かれそうだ。
「兵次郎殿、天照僧正と大烏元目は、どのような人物で」
「兵次郎でいいです」
彼から聞いた天照僧正の印象は、菩薩だった。
「彼女は優しい……」
「優しいですね、まるで人には見えないくらいに寛容な人です」
「大烏元目も同じですか」
「彼は……ふぬけです」
「――ふぬけ……」
一馬は驚く、敵として憎むべき相手に見えない。
「驚かれるのは当然です。基本は天照僧正が、命を下しています、大烏元目は、ただただ彼女に追従しているだけです」
なるほど、骨抜きにされた城主と怪しい女僧正。彼女が元凶なのかと思うが子供をさらう理由がわからない。
「月華も、人さらいにつれて来られた。兵次郎も同じなのか」
「私も同じです、遠い昔に異様な風体の男に、文字通りに荷物を運ぶようにつれて来られました」
「そして修行したと」
「ええ、幼いので普通に感じていました」
剣術、体術、そして房中術。男女の交合で相手を籠絡させる訓練をする。だが理由がわからない。一馬は兵次郎から、さらに詳しく話を聞こうとした。
「一馬」
「父上」
ぐるりと振り向くと背が高い男だ。一馬の父、藤原左衛門が居た。