SS 藪知らず【#白いワンピース】#青ブラ文学部参加作品(800文字くらい)
白いワンピースの少女が森を見ている。深い森は昼間も暗く奥がわからない。
「なにしてるの」
「別に……」
竹の虫かごをもった少年が心配そうに近づく。少女の表情は真剣で森に顔をむけている。
「この森はだめだよ、藪知らずだから」
「藪知らず?」
「入っちゃ駄目な土地」
「そうなんだ」
真っ白なワンピースは上品でお金持ちの家の子に思える。きっと東京から来たと思う。手でおいでおいですると素直についてきた。
「どこに住んでいるの」
「あそこ」
近くに瀟洒な洋館が建っていた、最近できたばかりだ。
「引っ越してきたんだ」
「お部屋で遊びましょう」
手を引っ張られて洋館に入ると、がらんとしている。女中もいないのか物音がない。
「誰もいないの?」
「おかあさんがいるわ」
二階に案内されると子供部屋だ。洋室の部屋にベッドとテーブルと勉強机。テーブルには白いワンピースのお人形がある。彼女は人形を抱くと椅子に座ってニコニコしている。
「学校に通うなら同じ教室かな」
「なんで?」
「ここは子供が少ないんだよ」
「なんで?」
「あの藪知らずに入って消えてしまう」
「なんで?」
「藪知らずの中央には池があって、そこの化け物に食われるんだ」
「そうなんだ」
彼女は、白いワンピースの人形を持ち上げると顔を隠す。
「お前も食われたいか?」
声が変わる、大人のような声にも聞こえる。少年は身動きできない。少女はいつのまにか成人した女性だ。少年に近づいた。
「とてもやさしくしてあげる」
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ぼんやりと白いワンピースの人形をもって立っている少年を駐在が見つけた。藪知らずの前で夜になって発見された。彼の説明はとりとめもなく夢を見たと思われる。洋館も存在していない。
少年はいつしか大人になり奥さんと子供を連れて実家に戻ると、あの藪知らずの前にいる白いワンピースの女性を見つけた。
それきり彼は行方不明。
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