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Photo by
evekabui
ワレワレは宇宙人だ 【世界一しょぼいタイムスリップ】#毎週ショートショート参加作品
「ワレワレはウチュウジンだ」
「はぁ……」
目の前の宇宙人は灰色で背が低かった。いわゆるグレイタイプといわれる宇宙人だろうか? 深夜残業で疲れた俺を指さす宇宙人は、吸いかけのたばこを凝視している。
「それはなんだ?」
「たばこだよ」
疲れ切った俺は宇宙人に出会っても驚きもしないし、頭も回らない。
「それをサンプルに欲しい」
「いいよ」
火のついたまま吸い口を宇宙人に向けて渡すと、奇妙な機械で封印する。
「アリガトウ、お礼にこれをやろう」
「ああ」
もらったのは万年筆ぐらいの金属の棒だ。真ん中にスイッチがある。気がつくと宇宙人は消えていた。俺は無意識でボタンを押す。
「ワレワレはウチュウジンだ」
「時間を戻せるのか?」
タイムスリップ、それは巨万の富を生む万能の機械。
「その通りだ、時間を戻してどんなことでも成し遂げることができる」
「すごいな、ありがとう」
「ただエネルギーが膨大に必要だった」
俺の体はカサカサに乾くとばらばらになり崩れ落ちた。宇宙人のタイムスリップ装置は人間には使えなかった。これは俺の経験した人生最後の世界一しょぼいタイムスリップ。