SS 占い師マイカの毎日:死神 【ワールドザワールド】
あらすじ
平行世界に含まれる大樹の世界で占いの店を経営するマイカ。毎日不思議なお友達が遊びに来る。
「このカードを買ってくれないか」
顔をふせた男は、私に細長いカードを机の上に並べた。見たことがないカードは装飾も美しくて欲しくなる。だが買い取りはしたことが無い。
「古道具屋では売れないの?」
男は顔を上げない、この手の商品は売れにくいだろう。私は装飾も気にいったので値段を聞いてみる。男は顔を上げる。予想をしていたが別世界の住人で、顔は頭蓋骨がむき出し。まるで標本のような顔を私に向けて動かない。私は彼に
「高くは買えない。あなたにこの国の通貨を渡しても意味なさそうね」
頭蓋骨男は
「俺を恐れないのか?」
と聞いてくる。この世界には異界の生物が多い。街を歩いていれば昆虫の顔を持った警官や角を生やした女性が歩いている。顔が頭蓋骨でも別に驚きはしない。墓所に行けば骨の門番すらいる。
「このカードで占いをして欲しい」
彼は異世界から来た時にはもう今の姿だという。持っていたのは『タロットカード』だと判るだけで意味も使い方も知らない。うろうろと歩いていると占い屋があるので入ってみた。
「私に、このカードを使えと言うのね?」
カードを使うには、象徴する意味を知らないと無理がある。ただし私もこの世界で店を出すだけの力がある。私は了解をするとカードをシャッフルしてテーブルに扇状に広げた。
「あなたが一枚を選んで」
頭蓋骨男は迷うように骨の指を左右に動かすと、真ん中を選ぶ。平凡な男だ。引き抜いたカードには骸骨が描かれていた。
「死神だ …… 」
カードは見ての通りに死を意味すると思う。私はカードを手にすると力を使う。カードから意味を取得する。カードが長く使われると、過去の歴史が刻まれていく。カードは記憶装置と同じだ。そして力を蓄える。蓄えた力を使い人の運命を変える。
「終わり という意味しかないけど 若干の希望もあるみたい」
彼は立ち上がるとどこからか大きな鎌を取り出すと私に向けた。
「そうだ 俺は死神だ 誰かの運命を破滅に導く」
大きく振りかぶり彼は私の破滅を願った。私は自前のカードを取り出すと大樹のカードを彼に見せた。大樹は世界だ、世界の理(ことわり)を明示することで彼の力を無効化する。私たちの世界は、彼の世界の力を否定する。骸骨男は霧散するように消える。
異世界から来たカードは誰かに使って欲しかった。たまたま死神のカードが役割を担ったのだろう。人騒がせで力を持った危険なカードに私は興味を持つ。
「誰かを占ってみようかしら?」
続く