SS ごはん杖 #毎週ショートショートnoteの応募用
「ごはん杖~、ごはん杖~」
表通りで物売りの声が聞こえると熊さんが外に出てみる。杖をたばねて背負っている盲人がいる。熊さんは好奇心で声をかけた。
「おおぃ、何を売ってるんだ」
「ごはん杖です」
「何に使うんだ」
「これを買うと、ごはんに困りません」
首をかしげる熊さんに盲人は声をひそめる。
「この杖は南蛮のもので、手に持ってふると願いがかないます」
「どんな願いだ」
「なんでもです」
「いくらだ」
「百文です」
「そばが十六文だ、まけろ」
「じゃあ五十文で」
「まけすぎだ」
「まけて文句はいわれたのは初めてです」
笑う盲人に五十文を払い杖を受け取る熊さんが、どう使うのか判らない。
「これどう使うんだ」
「呪文が必要です」
「教えてくれ」
「すぐ後ろの子が売ってくれますよ」
幼い少女が立っている。どうやら盲人の娘のようだ。
「じゅもんは一両になります」
「高いよ」
「なんでも願いがかないますからね」
熊さんは騙されたと思ってがっかり、盲人はそんな熊さんにまた声をひそめて
「この商売は儲かりますよ、元手が客が使った割り箸ですから」
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