![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/153715695/rectangle_large_type_2_9edea54287278881dfc93c831f1064d6.jpeg?width=1200)
ご免侍 十章 決戦の島(六話/二十五話)
設定 第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 第六章 第七章 第八章 第九章 第十章
前話 次話
あらすじ
ご免侍の一馬は、妹の琴音を助けるために鬼ヶ島を目指す。父と母は敵として一馬の前に立ちふさがる。しかし船出をしたすぐに、散華衆のもう一隻の鉄甲船が、襲いかかる。
六
もう太陽が沈む寸前だった、島影から現れた散華衆の鉄甲船が、一馬達が乗る船に追突して、両者の船が沈みはじめる。
「月華、泳げるか」
「平気だよ」
船の連中は、船を捨てるように海に飛び込んだ。近くに海賊船もあるし、瀬戸内海の大小の無人島まで泳げる。
「旦那も早く逃げてください」
連発銃をかまえた元山賊の権三郎が甲板に姿を見せた。
「鬼山殿は」
「もう海に飛び込んで泳いでおります」
老人なのに泳ぎが達者なのは、鍛冶で体を鍛えているせいか、水練になれているのか、わからない。船が傾きはじめると、向こうの船から続々と敵が乗り移ってくる。
轟音一発、権三郎の放った弾が広がるように敵に飛散した。さらに一発、また一発。恐るべき連発銃は、散弾を連続で発射する。
まだ若いであろう散華衆の男達が血まみれでうめいている。
「旦那、弾がもうないです」
「お前もすぐに逃げろ」
長身の男が姿をあらわした、肩幅の広い無表情の顔は露命臥竜だ。
「ご免侍!」
一馬は決着の時だと直感する。ここで倒さなければ、強敵を一人でも減さないと、父親に勝てる気がしない。
「月華、手出しはするな」
臥竜が怒声で呼応する。だが月華は、落ちている刀を拾い前にでる。
「私が殺す」
「やめろ、月華」
力量が違いすぎる、妹である月華を傷つけなかったのは兄の優しさもあるが、誰よりも大事にしたい臥竜の愛の形だ。
猛然と突っ込む月華の切っ先が届くまえに、臥竜の長大な野太刀が月華の刀をはね飛ばす。重さが違う、早さが違う、技量も違う。
「ちくしょう」
「お前は生きろ……」
月華そのまま素手で兄の腹に突っ込む。それをつかむと臥竜は、彼女の体を抱えて海に放り投げるように船縁から落とした。
![](https://assets.st-note.com/img/1725871025-k1V4ZJmof5Wh9CXxNtEpqSru.jpg?width=1200)