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SS 確かに回らない寿司だけどさあ… #ストーリーの種

俺はマイナーグルメオタクの馬居望男うまいぼうおだ。今日もマイナーな食を求めて歩き回る。今日は気分的に寿司だ。入店すると寿司種の臭いが充満する。寿司が特別に感じる瞬間だ。最近は回転だ、ロボットだみたいな仕掛けで寿司を食べるので味気ない。

俺は高そうな店を見つけてしまう。懐具合が心配だ、それでも俺は吸い寄せられるように入店した。
「いらっしゃいませ」
女性の板前が挨拶をしてくれた。この業界ではやはり女性は少ない。華やかな女性が握った寿司はきっとおいしいに違いが無い。

俺は席に着くと端末に気がつく。最近の自動化の流れだ。板前と話をするより端末で選べと?俺は我慢してメニューを見る。

「なにがあるかな……」
すべて時価だ。俺は少し心配になる。俺は安そうなタコを頼んでみる。端末がメニューからキャラに変わる、女の子キャラがにっこりと笑っていた。VTuberに見える。
「タコですか?」

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合成音声だ。キャラが話しかける。カワイイ声でタコの説明を始めた。
「タコは日本人がよく食べている食材で(以下略)」
説明が始まる。最近の若い人はタコを知らないのか?とも思うが、画面のボタンで外国語の切り替えができる。

「なるほど食文化を説明する事で親近感を与えるのか」
最新の寿司屋は進化している。俺はしばらく見ていると女性の板前さんがタコを出してくれた。メニュー画面で説明を聞いていると時間つぶしにもなる。

出てきたタコをわさび醤油につけて食べる。うむ美味い。タコの味だ、硬くてコリコリしてて食感が良い。俺は渋いお茶を飲むと次を頼む。メニューで寿司を選ぶたびに端末がいろいろと教えてくれた。

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満腹すると会計をしてもらう。板前の女性が伝票くれた。時価だ。値段が判らない。
「いくら払えばいいですか?」
俺は女性の板前に聞くと、端末を指さして質問に答えてくれと言う。見るとクイズが出ている。端末の質問に○とか×とか押すだけだ。全てを答えると端末がしゃべる。

「あなたは食のプロですね!十万円です」

俺は唖然として女性板前を見る。確かに時価だ、店が決めるのも判る。だが十万円は無いだろ、俺は混乱していると板前はクレジットカードでも良いと教えてくれた。仕方が無い高級店で時価を頼んだ俺が悪い。払った。

女性の板前は申し訳なさそうに
「本当は時価というだけで、昔はお客さんのふところ具合を見て決めてたんです。それができる板前は居なくてAIに判断させる事にしました」
丁寧に俺に説明する。

「それで今回はあなたは、食のプロと判断されてかなり高くなりました」
俺はプロと言われると恥ずかしいが気分は良い。AI君は俺が高級グルメしか食べない金持ちと判断した。気分良く外に出た。

「確かに回らない寿司だけどさあ…………」
俺は店から出ると後悔する。高い。来月は切り詰めないといけない。俺はとぼとぼと家に帰る。

店内では板前が人工知能に自己診断させた。
「今のお客さんはちょっと貧乏そうよ。十万は高いと思うわ」

AIは回答する。
「大丈夫です。プロと褒めとけば、あなた目当てにまた来てくれます」

女性板前は、ぼったくりAIを見てため息をついた。

終わり

AIさんはタコ寿司を上手に描けません、すいません。

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