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満月のフール【カバー小説参加作品】
私は嘘が書かれている便箋を手にしている。こんな嘘しか書かれていない大事な大事な古びた用紙を胸に抱く。
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君を憎んでいると書くと驚くかもしれない。でも本当なんだ、復讐するつもりで君を呼び出した。
なんて嘘だよ、ちょっと信じた?
孤立している君と仲良くしたのは、君が好きだった男子生徒からの命令だったんだ。君が彼の好意を受け入れないと判ると、君にも嫌がらせをしたよね。僕は孤立するのが怖かった、命令されるままに君に近づいて、君に傷をつけるのが目的だ。
僕の破れかけた学生証の顔写真を見て君はなぜか「あの世からのFAXみたい」と映画の台詞を説明してくれた。そうだね、まるで生気がない写真だから、二人して笑ってしまった。
そして君の部屋でBON JOVIのポスターを見ながら、誰が好きかお互いが指さして楽しんだね。お芝居さ、僕はロックなんて聴かない。ロックなんて大っ嫌いだ。
なんて嘘なんだ、ちょっと信じた?
呼び出した日は、プールの授業が終わったばかりだったかな。先生が鍵を閉め忘れたのか忍び込めた。二人で用意したスク水でプールで泳いだ。満月が恐ろしいくらいに大きかった。
君は僕の肩のアザを見て心配してくれたね。まるで本当の友人のように接してくれた。僕はお芝居が下手なんだ、いつか君が気がついて、僕の嘘を見破ってくれると信じていた。だから僕は鈍感な君が嫌いだ。
なんて嘘だからね、ちょっと信じた?
プールサイドに座る君に
「君が好きだ。なんて言ったこと。
あれはウソだよ。信じてたの?」
と告白をすると、君は笑うだけだった。賢い君はすべてを知っていたのかもね、本当の気持ちと嘘にしたかった気持ち。
だから君は悪くないんだ。君が僕から離れたのも僕の境遇を理解していたからなんだ。僕は君の気持ちを傷つけるか、金を用意するか彼らに選ばされた。もちろん、お金なんてもうないんだ。家族にもばれていた。だから僕は、憎い君のために、復讐する事にしたんだ。
あの時に、プールサイドに座る君の伸びた髪から滴る水が、頬を伝って落ちる光が、再びプールに溶けた時。君の時間は進み始めた。
すべてを知った君は、僕から距離を置いた。それが正解だ、僕なんかのために君が傷つく事はない、あの夜、話せてよかったよ。だから僕はもう今の君の前には現れない。
だから僕の為に毎年、この日、この場所で、両手を合わせてくれなくていいんだ、なぜなら僕は君を憎んでいたから。いや本音を書こうか。
あの夜、僕は、本当は、
ずっと一緒にいたいと願った。
──なんて嘘だよ、ちょっと信じた?
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「遺品を整理していたら見つけたの、あなたにもらって欲しい」
彼の母に頭を下げて、出されなかった手紙を持ち帰る。今でも苦しいときに読むと元気になれる。彼の最後の嘘が私を癒やした。
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カバー小説に参加しています。今回も難しかったです。
カバー元です。ありがとうございます。