SS アニュの困惑【この中にお殿様はいらっしゃいますか?】#毎週ショートショートnoteの応募用
「この中にお殿様はいらっしゃいますか?」
アニュが困惑した顔で村の広場で叫ぶと、わらわらと村人が集まってきた。
「アニュどうした?」
「実は布を織っていると、いきなり神様が現れて責任者を出せというんです」
アニュはインドに住んでいる裁縫が得意な少女で、彼女は神話をモチーフにした物語で布に描いていた。そこに、アニュの住んでいる家から、のっそりと象の顔を持った神が出てくる。ガネーシャである。
「位の高いものは、おらんのか」
「これは、ガネーシャ様、この娘が何か失礼な事をしましたか」
あわてて村長がガネーシャに頭を下げる。村人もこぞって両手を合わせて祈りのポーズだ。中には体をねじってヨガをする。
「そうではない、私を顕現させるほどの腕前の娘だ、褒美をとらそう」
ガネーシャが胸元から金貨をばらまくと、村人がそれを見て狂喜乱舞して、村人がガネーシャに群がり胸元から金貨を奪い取る!
気がつけば、ガーネシアだったものは地面で土まみれの布に変わっていた。金貨も糸くずだ。村人はがっかりして家に戻る。アニュは布を大事そうに家に持って帰った。
「それで、どうなった?」
「洗って完成させたら、良い値で市場で売れましたよ」
キラキラ光る銀貨を両親に見せるアニュは、ぽつりとつぶやく
「今度からは、ナラシンハ(戦いの神様)を編みます、だって不死身だし」
両親は惨劇を恐れてアニュを説得するのであった。
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