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SS 倉の娘【#セピア色の桜】#青ブラ文学部(700文字くらい)

 倉の窓からセピア色の桜が見える。鮮やかな桃色ではなく色あせた褐色の桜。腕を窓からだらりとたらして村を見た。

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「おねえさん」
「なに?」

 くるりとふりかえると十歳の少年がはにかんでいる。十六の私と彼はイトコ同士。

「お風呂に一緒に入れって……」
「わかった」

 彼を台所に連れて行くと服を脱がせる。すぐ横が風呂で、脱衣所なんてない。彼のすべすべした肌を、わざと触ると体をくねらせる。

「くすぐったいよ」
「早く入って」

 私もすぐ脱いで、浴室にはいると彼は私の体をまじまじと見ている。女の体に興味を持つ年頃だ。いや違う、男はもっと幼い頃から興味を持つ。

 これは自然な事で、血が近いとそれだけ考えている事も近くなる。彼の望むことと私の望むことが同じだと気がついた時には、彼を抱いていた。

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「なんばしょっとね」
「嫁入り前に」

 彼は当主となるために他家から嫁をとらないといけない。私は妊娠すると倉に閉じ込められた。古い因習がうるさく私はもう嫁にいけない。だから子供もとりあげられた。それからずっと倉に住んでいる。

 倉では贅沢はできたが外には出られない。ただただ退屈で倉の窓から村を見ていると、幼い男の子が姿を見せる。私を見つけるとびっくりしたように逃げ出した。村の子供かな?

 そんな事を繰り返すといつしか彼は私に会いに来るようになった、彼はすぐに大きくなる。子供の成長は早い、私が四十近くなると立派な軍人姿を見せにきた。

「おかあさん、いってまいります」

 息子は敬礼をして、そのまま戻らない。私は今も息子が帰ってくるのを待っている。老婆になった私を抱きしめて欲しい。

#セピア色の桜
#青ブラ文学部
#ショートショート

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