SS 風見鶏ローディー #毎週ショートショートnoteの応募用
「ちょっと歌詞を間違った! 」
すねたように笑う彼女は、新人アイドル。VR空間で活躍しているVチューバーとして売り出し中だ。かわいい3D-CGで人気もあるが、リアルでも十分にかわいい。
生身とCG両方のキャラに人気がある事で、客層は2倍になる。売れない方がおかしい。俺はローディーとして、彼女の裏方で活躍する。本来のローディーは、楽器を用意したり、技術面で支援をする。今ではコンピューターの知識で、アプリケーションやデータを調整をする。
「ねぇ、このVRゴーグルは買い?」
「視野角が狭くて疲れるぞ」
最新の技術、最新の機材、最新のソフトウェア。先端を走る事でコアナードの連中を惹きつけて、一般ピープルにも共感を与える。今の仕事は最高だ。
「でもね、男性ってやっぱり○●○●」
所詮は若い娘だ、リラックスした状態で本音が出る。生放送中に失言をして炎上すると彼女はリスカした、放送中に手首を切って見せた。命は助かったが放送者として失格。スポンサーが降りた。
俺はすぐに彼女に見切りをつける。風見鶏だ、風向きが悪くなれば逃げるのは当たり前だ。巻き添えにならないように隠れて逃げる。
「また別の新人アイドルに連絡するかな?」
俺はネットに接続して、人気が出そうなVRアイドルを探す。
『風見鶏ローディー』
検索中に変な動画を見つける、俺は再生した……俺の動画だ。あのリスカした彼女が俺を罵っている、自殺するとわめいている、私を捨てたと恨みの顔で俺を見る。
「私が苦しいときに助けてくれない……」
俺は嫌な汗で体が濡れる、気持ち悪い、俺のせいなのか?お前の失言のせいだろ。ひどい逆恨みだ。
俺は気分転換にVRゴーグルで仮想世界にログインする。いつもの業界仲間の部屋に入ると空気がおかしい。
「おい、おまえ、あの娘と寝たのか?」
「かなり特殊な趣味なんだな、お前w」
失言したのは俺の異常な性癖のせいだ。彼女はストレスで失言した。嘘の情報がばらまかれていた。風向きは最悪だ、どこを向けばいいのかもう判らない。