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SS 響く礼節をペンペンしてみる#毎週ショートショートnoteの応募用

 私はレディに生まれ変わっていた。図書館の本の虫だった私は超有名なライトノベルの新作を楽しみにしていた。そこで事故った。本屋にファンが殺到してエレベーターが停止して巻き込まれて死んだ。

「読みたかったなぁ」
 流行の転生ものだ、自分が悪役に生まれ変わる不思議な話。悪役だとヒロインから命の狙われる危険もある。そこを上手に回避してハッピーエンド、それが楽しい。

「この服は? 」
 私は寝室で横になっていたが、西洋風のベッドで、私はナイトドレスを着ていた。明らかに私の居た世界とは異なる。私は転生したのかな?

 朝になるとメイド服を着た召使いが嫌悪感を丸出しで私の世話する。どうやら嫌われているらしい。元いた世界から無視されるのに馴れていた。私は黙って、お着替えする。

(今日は何も言わないのね?)
(いつもは怒鳴るのに)

 ひそひそと召使いがつぶやくが、クラスメイトから意地悪な事を言われているから平気だ。

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 しばらく生活すると私は、買う予定だったラノベの世界に住んでいる事が判る。そして私は悪役令嬢役だ。

「この世界は、私がヒロインなんだ……」

 私は小説のオチを知らない。私が生き延びるためには正しいルートの主人公役の少女の取り巻きの男性を籠絡しなければいけない。

「無理ゲーね……」

 頭も悪く、今は顔が良いが意地悪そうな少女が鏡の向こうから見つめている。私では生き残れないだろう、だったら静かに暮らしたい……

(最近のお嬢様は本ばかり読んでいる)
(昔はヒステリーばかりだったのに)

 父親の図書室で静かに本を読んでいると生きていて良かったとクスクス笑う。他人から見たら気持ちが悪いと思う。ある日、私は王子の許嫁候補いいなづけこうほになる、本来の流れだと正規ルートの姫から王子を奪って幸せになるのがセオリーだが興味がない。私はぶっつけ本番で嫌われる事を選択した。

「響く礼節をペンペンしてみる」

 王子が許嫁を選ぶ時に、許嫁候補は拒否の場合は手に持った扇で顔を隠す。もちろん拒否をしても王子が選ぶのだから本当の拒否はできない。そんな大事な場面で、扇を手でペンペンすれば非常識と判断されて追い出される筈だ。当日は無作法な事をしていた、周囲の大人達は眉をひそめるが、私が悪役令嬢なので、半笑いで見ている。つまりいつもの素行だ。

「あなたを許嫁に決めます」

 私は選ばれてしまった、真剣な目つきの王子は私の手をそっと握った。

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 「なんで選んだのです? 」
 「君は強情だが博識でやさしいからね」

 どうやら元の世界の常識が、この世界では『信じられないくらいに博愛な少女』の存在になる。人類が二千年を要した常識が私を救った。でもまだ許嫁でしかない、私が王女になる道は、遠い筈……



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