ヒサギの占い ワールドザワールドシリーズ
街に買い物に行くと声をかけられた
「ヒサギ、これもっていきな」
果物を何個か、もらうと頭を下げた。
親切にしてくれる人は居るが、いつも何かにおびえている。
自分に自信が無い、なぜなのか私は知りたかった。
買い物をすませて家に戻ると、調味料が足りない
「また買い物かぁ」
私は、いつもこんな具合で、ものを忘れる
メモを取ればいいのだが、それもしない
のろのろと家を出る。
「そうだ、私のことを占ってもらおうかしら」
街の端にある、占いの女性に会いに行く
「あら、めずらしいわねヒサギ」
事情を説明すると
「占いは性格診断じゃないけどね、それでも手がかりは示せるわ」
カードを取り出すとシャッフルする
カードを伏せて、私に選ばせた。
一枚めくると『墓場に居る女性』が描かれていた
「これは、墓場の幽霊女神かしら」
女神は謎が多い、冥府の門番の可能性もある
私は「墓場に、なにがあるのかな?」
占い師は、
「この世界の力関係は複雑で、わからない事が多いのよ」
別のカードをめくると『知恵の木と学者』のカードが出た。
「そうね、クァシンは適役じゃないかしら、彼はなんにでも首をつっこむわ」
なるほど、彼の知識欲は際限が無いと聞いた事がある
残りのカードをめくると
「なにかしらの解決があると、出ている」
私は納得をして代金を払い、調味料を買いに行く。
翌日はクァシンの家に行くと、おばあさんが迎えてくれた
「あらまぁ、ヒサギちゃん、中でお茶を飲むかい」
席で待っていると、クァシンも席に座る
「なるほど、幽霊女神と会いたいのか、まってくれ用意してくる」
上機嫌で、肩掛け鞄にいろいろつめると、すぐに出発をした。
「私は観察が得意だからね、幽霊女神とは君が話をしてくれ」
私一人では心細い、誰かが居てくれるだけで心がやすらいだ。
墓場までくると、黒い布につつまれた門番が立っている。
「墓場の女神さんに会わせてください」
門番は、首をふるだけで、無言だ
私は、ふりかえって彼を見た
クァシンは、「君は門番なのか」と聞くと
また門番は首をふる
「なら問題ないな、このまま通るよ」
スタスタと中に入った。
「大丈夫なの?」私は門番を怖そうに見るが
クァシンは「彼は別に僕たちを捕まえる気配もない、武器もない」
「観察すれば判る事だ」
冷静に判断をする
墓場をしばらく進むと、霊廟が見えた
たぶん女神は、そこにいるのだろう
霊廟の戸を叩くと、扉は自然に開く。
中に入ると見上げるほどの天井で、怖くなる
しばらく歩くと、声がする
「何の用?」
後ろから声がしたので、びっくりして振り向いた
黒いレースの服をきた、長身の女性がいる
女神だろう。
「私は占いであなたのカードを引きました」
「・・・なんというか、私が不安な理由が知りたくて」
自分でも、こんな個人的な事で、女神に会いに来るのは
馬鹿げていると感じていた。
女神は私を見ながら、「あなたには両親は居ないのね」
「はい、死別しました」
「両親とお話をする?」
死別をした親族と語れるのは、初めて聞いた。
「お願いします」
「では、目をつむって」
女神は、私の額をさわる
触られると同時に、肉親の姿が見えた。
懐かしさに涙を流しながら、父と母に近況を伝える
母が「速く、あなたも誰かと暮らしなさい」
女神にお礼を言いながら、墓場を後にする。
なにかすっきりしたような、もやもやが無くなった
私は単に、さみしかっただけ?
クァシンは、美しい少女みながら今日の収穫をメモする。
「墓場の女神は、癒やしと慰めを与える」
新しい情報に、ニコニコしている。
ヒサギはそんなクァシンに近づくと
「私の家で、夕飯を食べない」
明るく笑うヒサギは別人に見えた。
占いは当たったようだ。