SS 最後のマスカラ#毎週ショートショートnoteの応募用
「最後のマスカラ……」
震える手でマスカラを塗る、老いた手は皮膚は黒ずみ皺がある。でも魔法のマスカラは私を変える。
「お母さん? これ何? 」
「美しくなる魔法よ」
母は私の顔に化粧する。鏡を見ると目が大人だ。
「すごーい、魔法だ」
私はマスカラで変身する。男達に求婚された、一番金持ちで地位のある男と結婚した。
「お前は化粧が濃すぎだ」
不倫されて離婚した。夫の相手は化粧っ気のない素朴な顔の女だった。私は不倫相手の顔に傷をつけてしまう……
出所して元夫が残した家に戻る、元夫は後悔から家と金を残した。それから一人暮らしで、マスカラを塗って男達と遊んだ。人生の中で一番楽しかった。
「今日もきれいですね」
近所の主婦が私の顔を見て薄く笑う。でも平気だ、私は美しい、マスカラは、美しくなる魔法の……
日曜に老女が倒れている、みなが集まり老女の顔を見る、目から真っ黒な涙を流して死んでいる。
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