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SS 石の塔【#暗暗裏】#青ブラ文学部
「おい誰か倒れてるぞ」
「本当だ、起こしてやれ」
男は他人の玄関先で倒れたふりをする詐欺師で、病気だと騙して飯を食って宿にタダで泊まる気だ。
「おいおい。大丈夫か?」
「いえいえ、もう動けません」
道中奉行令により旅行者が病気の場合は、地元の村が金を出して治療する義務があった。
「しかたがない、暗暗裏様に頼むか」
「うむ、そうしよう」
大八車が来ると男を乗せてガラガラと街道から村はずれまで運ばれる。そこは、石組みされた異様な塔だった。
(なんだこれは……)
見るからに気持ちが悪い塔は、鉄の棒が窓に刺さっている。
「暗暗裏様、ご病人参りました」
「通せぇぇぇ」
歌うように呪文のように唱和されると、男の方はもうたまらない。
「あ! 治りました。もう平気です」
逃げようとするが縛られて塔の中に押し込められる。中で叫び声が上がるが、すぐに途絶えた。
「暗暗裏様は、仕事が早いな」
「毎日、行き倒れがいると村が破産するからな」
村人は陰鬱な気分で、その場を後にした。
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「ここはどこです?」
「地下にある銀山だよ、病気が治ったらここで働いて金を返してくれ」
治療代は過酷な労働で返す。男は安易な詐欺行為で地獄のような労働を課せられた。チャンチャン