【掌編小説】リレー小説⑥(これってひよこの挑戦状?)#電車にゆられて(WSDからの続きで)
ドクンドクンと脈を感じて頭が重く熱い。俺は頭痛を感じながらも気分は良かった。列車から降りると乗客が大量に集まる。彼らは狭い改札に向かって歩き出した。トンネルから出た先は洞窟のようだ。
「やっぱり来たのね」
水車小屋の女性が俺を待っていた。みなが俺を追い越しながら改札から出ていく。空は赤黒く湿気を感じた。俺は体全体が濡れているような錯覚もある。
「ここはどこなんだ……」
「生と死の世界、どちらにしろ、あなたは最後は死ぬ……」
「死ぬのか……」
「さぁ、いきましょう」
「どこに行くんだ」
「死の世界に向かうの」
乗客はもう居ない。彼女と腕を組んでゆっくりと歩く。とりとめの無い話をしていたと思うが記憶が定まらず、すべてがあやふやだ。しばらくすると乗客達が地面に横たわっていた。
「彼らはダメだったのね」
「死んでるのか」
「そうよ、死んでいるの」
「なんで頭や体の一部がないんだ」
「それは……歳をとったから?」
俺には理解できない事を彼女は説明するが、まったく記憶ができない。単語は理解できるのに、わからない。
「異様すぎる」
「でも怖くは無いでしょ」
言われてみれば、爽快とも思える高揚感がある。俺は先に進みたくて仕方が無い。彼女を引っ張るように歩き出した。
「元気ね」
「どうせ死ぬなら最後を見たいんだ」
洞窟の中に無数の乗客が倒れている。一部の乗客は手をつかって這って進むが、俺の方が早い。
「あの壁が終着点か」
「そうね壁の向こうに行かないと」
とてつもない高さの壁につきあたると、俺は両手でよじ登る。
「あんたも来るんだ」
「私も死ぬ世界を見たいわね」
壁は傾斜がきつい坂道だったが手足を使って進むことができる。無限の時間に思えるが一瞬なのかもしれない。彼女を助けながら、壁にある大きな穴を見つける。
「そこを通るの」
俺は満面の笑みを浮かべて穴の中に入ると彼方に巨大な球体が浮かんでいた。興奮で、この世界の奇怪さを忘れている。
(そうか、これが死の世界か)
俺は泳ぐように体を浮かすと球体に向かって飛び込む。彼女と腕を組んだまま、俺は球体に激突した。
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「元気な双子の赤ちゃんですよ」
看護師が出産したばかりの赤ん坊を母親に見せている。生まれて、また死ぬ世界の始まりだ。
ひよこ師匠さんが記憶喪失の男性を列車に乗せて
日出詩歌さんが水車の前で女性を出演させ
WSDが奇怪な世界を作り
Love the PTA Toshi Inuzukaさんがトンネルの中に……
WSDが自分の世界のオチを見つける……
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