SS メネシス ワールドザワールド
あらすじ
マルチバース内で認知処理を拡大したクァシンは
ヒサギを助けるためにクリスタルで構成された
世界を飛翔する。
ワールドザワールドの大樹の女神は冒険者のアイから状況を聞くと
「クァシンは先走りすぎるわね」
軽く言うとアイから指輪を受け取る。
「元々はヒサギに予兆を与えて変化を期待しているのよ
あなたたちが介入する事でヒサギ自身が気づけば成功ね」
アイは深刻な状況と考えていた、クァシンとヒサギが融合する
イメージがわからない。女神の話を聞く限りは心配をしてない
のか?不思議に思えた
「この世界は柔軟性があるわ、パラメータを更新をしても
影響が出にくい作りにされているのね。過去への干渉は
現代にすぐには影響でない、ゆっくりと変化をしがなら
書き換わるイメージになるわ」
女神を憎むガヨクが、単なる小物の悪人になる事で彼の悪事で
死亡した人達も生きている世界が構築されつつある。
その書き換えに使われる力(エネルギー)は、ヒサギの体を
通して世界を更新している。
そのままでは、ヒサギは消耗してしまう。
「まずクァシンにまかせて見ましょう、ヒサギの家にいくわよ」
大樹の女神は、アイの腕を引っ張ると部屋から出る。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
白く大きな鳥に変化したクァシンはヒサギの家を探す。
大きな裕福そうな家を見つけると庭に降り立つ。
深夜で寝静まった街には人影は無い。クァシンは壁を
通り抜けるとヒサギの寝室に入る。ヒサギは熟睡している
彼はゆっくりと彼女に近づくとキスをした。
朝が来る、窓から差し込む朝日がベッドを照らし出す。
そして彼女は目を覚ますと大きく伸びをした。
「今日は気分がいいわ、なんか頭の中がすっきりしてる」
不思議に感じながらも、元気よく朝食の支度をすると
扉が叩かれた、出るとツキヨが居る。
「黙ってついてきて」銃を見せられて城まで誘拐された。
「女神候補の娘だな?お前に用がある」
ガヨクが腕に触れると彼女は万華鏡のような多面体の鏡の
世界に居た、そこは過去も未来も自由に見られる世界だ
ヒサギは不思議そうに鏡を見ると両親との楽しい思い出や
アイ達との冒険のシーンを見られる。亡くなった両親が
居る鏡を熱心に見て回る、懐かしくて涙もでる。
ある鏡に両親が馬車に乗って遠出する場面を見つける
そこに立ち止まって見ていると両親が夜盗に襲われる
場面になる、夜盗のリーダらしき人物が両親を殺す。
ヒサギはリーダーの顔を凝視した。ガヨクだ。
両親を殺したのはガヨクだ、ヒサギは犯人を把握する。
ヒサギは腕にはめられた従属の腕輪を見ている
「これでお前は俺の手下だ」
ガヨクは万能の女神候補を得た事で世界を自由にできる
高揚感から大声で笑い出す。力を持ちながら何もしない
怠惰な女神に代わり俺が世界を平和にしてみせる
誇大妄想で気が触れたように笑うガヨクにヒサギは
手を伸ばす、彼に触れるとガヨクは急激に老いた。
見る間に髪が抜け落ちて皮膚は茶色に変化する、歯が
抜けて床に落ちる、腰が曲がり足も細く弱くなる。
もう立つことも困難なのかガヨクは座り込むと口を
開いて話そうとするが言葉にならない。よだれ
をたらしながら細い腕で部下のツキヨに手を伸ばす。
「ガヨク様」ツキヨが彼を心配そうに介抱するのを
横目に見ながら、ヒサギは従属の腕輪を砂にして
破壊をした。
クァシンから得た知識と女神候補の力が融合すれば
敵になる人間はいない。コザルは変化したツキヨを
見ると壁際まで退く。そして頭を抱えて震えている
何がそんなに怖いのだろうか?
ヒサギは地下室から出ると部屋にある大きな鏡で
自分の姿を見た。顔が朱に染まり目がつりあがり
体中に縞の文様が浮き出ている。
「わたしは・・・そうね、
義憤の女神(ネメシス)かしら」
恨みではない、正しく生きていた人達を害する者に
懲罰を与える。私は女神として完成した。