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ご免侍 一章 赤地蔵(十七話/三十話)
あらすじ 一馬は、侍と医者の暗殺を頼まれる。謎の男達に襲われていた娘を助けた。
朝になり眠っている琴音を起こして、布団に入らせた。通夜が終わり、男達が起き出して片付けを始める。岡っ引きのドブ板平助も、道場の真ん中でいびきをかきながら眠っている。足で起こすと眠そうに薄めを開けてからまた眠る。
「タヌキ寝入りするな」
「医者の明庵ですかぁ……」
ドブ板平助があくびをかみ殺しながら説明を始めた。長屋に住んでいた医者は背中から切られていた。文字通りに体をあじのひらきのように真っ二つにされている。
「人のひらきなんぞ見るもんじゃないです」
言いながら嗚咽をする。あまりの無残さに片付けが厄介だったとぼやく。
「切り口は見たか」
「あっしも刀傷は見知ってますが、達人でしょうな」
まるで豆腐を切るような切り口だと驚嘆している。神業のような殺され方をした明庵は、口封じだろうと思える。
「判った、ご苦労だった」
「ものは相談ですが……医者の明庵の所に薬が一杯ありまして、売れないかなと」
岡っ引きのドブ板平助は、意味深に一馬の顔を見る。どうやら買ってくれと頼んでいる。
(薬か……あっても無駄にはならんか)
一馬も薬に関しては親から教えられていた。戦闘中の手当の知恵として重要だからだ。体の不調をなくすために薬は大事だ。
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