ご免侍 十章 決戦の島(十五話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬は、妹の琴音を助けるために鬼ヶ島を目指す。父と母は敵として一馬の前に立ちふさがる。しかし船出をしたすぐに、散華衆のもう一隻の鉄甲船が、襲いかかる。船は沈み助けられたが、敵に捕らえられた。母から琴音を助けるように言われた一馬だが、船にたどりつくと、父親の藤原左衛門が立っていた。
十五
海の水平線を見ながら左衛門が静かに語りはじめる。
――俺は不器用な男だ。桜の事をあきらめきれずにいた。内情をさぐるために散華衆を使ったのは俺だ。桜が生きている事が判ると散華衆の一味となって指示をだした。幕府を裏切る事になれば、ただじゃすまない。だから補陀落渡海で浄土へ旅立つつもりだ。
「父上、来世のために死ぬと」
「お前も連れて行く」
「琴音もですか」
「そうだ、お前達は兄妹だ」
ぞくりとする、琴音が家族に思えた理由がそれなのか……
「それでは琴音の父親は……」
「大烏元目だ」
異父兄妹、俺は琴音とは結ばれぬ。
「だが散華衆の一部の奴らが、琴音を贄にしようとしていた」
「だから逃がしたと」
「生まれた琴音は、水野忠史にあずけて隠したつもりだったが、悟られた」
「大烏元目は、子ができた事はしらないのですか」
「女が生まれた事で興味を無くしたと聞いた」
「それでも死ぬ意味はありません」
「安徳天皇様と一緒に補陀落に旅立つ」
父は幸せそうに見える。彼はただ家族を取り戻したいだけだ、そして来世で幸せに暮らしたい。
「馬鹿げている」
「そうだな、俺は馬鹿だ、お前を殺して箱につめよう」
父親から殺気があふれでた、一馬に最強の敵が立ち塞がる。一馬はゆっくりと鬼切りを抜く。