SS アイドルアレルギー #爪毛の挑戦状
しばらく前からアイドルに対する認識が変わる。容姿が優れた女性が敬遠された。カワイイや美しいは禁句だ。人を判断する時に見た目はダメ。常識が変化すると、リアル肉体を評価しなくなる。アイドルアレルギーの完成だ。
それでも人類はカワイイが好きだ。アイドルは無くならない。
「イェーイ、盛り上がっている! 」
A子はバーチャル空間でライブする、自宅の部屋で無線のモーションキャプチャで体をトレスさせながら舞台で踊る。同じようにライブを楽しむ人達は自室で手をふる、表示されているのは、アニメの女の子だ。だがもうこの技術も古い、人気が落ちると事務所から解雇された。
「キャラが人格を持って対応するAIが出来上がった、人間のアイドルが不要なんだよ」
下火なのは判っていた、それでも女の子達はアイドルになりたくて仕方が無い、外に出て頑張る事にした。
「お! あのキャラかわいいじゃん」
路上で踊るA子の周囲に集まり応援する男達。彼女は特殊なお面を使っている。ディスプレイフェイスは、球面液晶の一種で顔に装着して使うお面だ。そこにカワイイキャラを映し出す。歌って踊るけど顔が熱い、それでも頑張った。
「ねえちゃん、なんぼ? 」
路上ライブは危険なのは判っていたが、男から体を求められる。路上を観察すると、娼婦達がみんなお面をつけて客引きをしていた。
「お面をつけたまま、するのかな? 」
アイドルは無くならない、男は常にカワイイを求めている。いつしか結婚する相手もディスプレイフェイスのキャラになるからもしれない。私もお面をつけたまま結婚する?
「イェーイ、路上のみんなも元気」
A子は今日も路上で踊っている。ディスプレイフェイスには、今流行のキャラが映し出される。素顔は自分だけのモノ……体が動かなくなるまでアイドルでいられる。
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