SS アニュの初恋【風を治すクスリ】#毎週ショートショートnoteの応募用
青く雲もない空を見上げながら、土手の上で幼なじみのマルカがつぶやく。
「アニュ、俺は風になりたい」
「風なの?」
「風だ、風になって飛んでいきたい」
「村が嫌い?」
「嫌いじゃないけど、このままだと……」
マルカは頭がよくて行動力もあるので狭い村では息苦しいに違いない。アニュもつぶやく。
「風になりたい病ね」
「風を治すクスリはないかな」
「でも風になりたいんでしょ?」
「ああ、風になって……」
「わかった、私が編んであげる」
アニュは風の神様ヴァーユを織り込んだ腰布をプレゼントする。マルカが嬉しそうに笑った顔が最後だった。マルカはそのまま村を出た。
(今頃、どうしているのかしら?)
「アニュ、マルカからお手紙よ」
「ありがとう」
母親から手渡された絵はがきには、複葉機の前で笑っているマルカがいる。彼は風になれたのかな? と、ちょっとだけさみしそうなアニュであった。
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