ご免侍 九章 届かぬ想い(一話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬の父が、散華衆の隠形鬼だと暴露された。一馬は、連れ去れた琴音を助けられるのか。
一
「兵次郎、船の仲間達の様子はどうなの」
「問題はない、船でみなを城まで運べる」
地図を広げて海上の一点を指さす。忍者の露命月華は、子供達が居る海城の場所を教えていた。それは鬼ヶ島とも呼ばれていた。
「キの城というのか」
隻眼の鬼山貞一があごをなでながら、つぶやく。
「水軍の城の跡だったのを散華衆が、いつのまにか居城として改築してます」
「謀反が成功するのか」
「それは、わかりません……」
「海城を攻めるのは楽そうだが、中の子供達も死んでしまうな」
みなが黙り込む。大勢で攻めても、城の外から砲撃をしたとして死傷者が大量にでる事になる。
「どうしよう」
「むずかしいです」
「一馬が、なんとかするじゃろ」
「……使えないよ、あんなんじゃ」
「父親が散華衆だったのがツライのでしょう」
鬼山貞一が立ち上がると武器を作ると言い残して、いそがしそうに鍛冶場に戻る。月華と兵次郎が顔を見合わせた。
「城の中で内応するものは多数います、私たちが助けに来たと判れば反乱が起きます」
「どうだろうね、最後は自分の命ほしさに邪魔するヤツもいるよ」
「四天王は三人まで倒されました、それだけ統率力が落ちている筈です」
兵次郎も立ち上がると、鉄甲船の仲間達の様子を見るために出て行く。露命月華は悩んでいた。
(確かに、一馬の親父が散華衆なのは、驚いたが……)
ゆっくりと立ち上がると一馬の事が心配になり部屋を出た。暗い廊下は、すでに人が寝静まったのか気配がしない。