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SS 繁華街の目立つところに、真っ白な看板が一つ。 #ストーリーの種 &窓辺の少女

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あらすじ
氷室玲子(ひむろ れいこ)は塩で霊現象を退けるスペシャリストだ。友人の衣羽舞子(きぬは まいこ)と今日も怪異現象を解決する。

学校から帰る時はいつも繁華街を通る。雑多な店が立ち並び飲食やマッサージ店が雑居ビルの中に入っている。看板もあって中に描かれている情報量がとにかく多いから何を経営しているか判らない。

舞子が指で「あの看板は変ね」と言う。繁華街の目立つところに、真っ白な看板が一つ。私もつられて見る。「まだ制作中なんでしょ」舞子は怪訝そうに「看板じゃなくて後ろに人が居るみたいで」と怖い事を言う。

「ストーカー?」舞子が敏感に反応しているので、美人さんは大変だ。「違うと思うけど……」私たちは看板に近寄るとさりげなく横目で見た。誰も居ない。「見間違いみたい」と舞子が笑う。その日はそこで終わる。

次の日になると、また白い看板がある。近所にある。下校時で家に帰る道だ。不信には思うが恐る恐る、裏を確認した。もちろん誰も居ない。念のために塩をふりかけて置く。

今日は朝にドアから出ると家の目の前に看板がある。不信どころではない。明らかに私を狙っていた。塩が通用しない?しかし霊障のような感じは無い。近寄って看板を蹴る。自分ながら度胸があると思う。看板から白い手が出た。

引っ張られると私は家を見ている。しかし体は動かせない。目だけは動く。状況から看板に閉じ込められていた。声も出ない、手も動かせない。真言も使えないので私は焦る。家から妹の愛優(あゆ)が出てくる。私に近づくと不思議そうに見ている。「おねえちゃん?」目だけで合図してみた。妹は困ったように「どうしよう……」

子狐の眷属の橙狐(だいだいきつね)は、妹を守る護身の獣だ。私に近づくと「珍しいですね 封印の付喪神ですかね」と暢気そうに言う。「おにいちゃんに相談する?」従兄の武雄の事だ、霊能者でプロとして活動している。目でOKと合図をした。

妹は家に戻ると母親を連れてきた。母は私を呆れたような感じで見ていると、看板を持って庭に置いてくれた。昼くらいには武雄が庭に現れる。看板の中に居る限りは喉の渇きも疲れも無いが退屈すぎた。

武雄が真言を唱える。「おんらごうまかだいからはまうんかんまた」いつもの銀鈴をだして小刻みに鳴らすと私は庭に立っていた。突然なので失調感があるのか体が揺れて倒れそうになる。武雄が私の胸に手を回して支えた、のはいいが、胸をがっつりつかまれた。手のひらでつかむな。

私はあわてて体を離して両手で胸を守った。守るべきものは無いが守った。「あ ありがとう」武雄は両手を前に差しだまま顔を赤くしている、「すまん」

微妙な雰囲気の中で母が庭に来ると「お茶を飲んでいって」と武雄を家の中に入れる。私はあわててついていく。武雄は「昔からある掛け軸の中の美女の話だろうと思う」と語る。付喪神なのだろうか、商家の美人の娘を絵にとじこめたりする物質霊だろうと予想していた。「彼らには意思はない 何も描かれていないから何かを描こうとしているだけだ」武雄が説明をしてくれた。

私はそれよりも、胸に手の感触が今だに残っているのが怖い。

終わり


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